慕嬢詩『中秋の名月』
 20時過ぎにお客さんが「お月さんがキレイやったで。次に中秋の名月と満月が一致するのは7年後やて」と来店。
 75歳の私は「そうかいな、7年後にはもう見られへんかもしれんので、ちょっとみてくるわ」と店外に出て空を見上げた。
 前日は曇りマークで微妙な空模様だったが、今夜はまる一日スカッと晴れマーク。一年で最も美しく見える中秋の名月が神秘的に輝いていた。
 キレイな満月をちゃんと見られてよかった。忙しい毎日、夜空をそっと見上げるだけでも癒される。今日はいい事があるかな。
 店に戻ると偶然にも有線で鬼塚千尋の「月光」が流れていた。楽曲の持つ美しさや儚さやミステリアスな音色が店内に響き渡っていた。
 そう言えば、娘の遺品にあった沢山のCDの中に、このタイトルを目にしたのを思い出して心がジワッとうるんだ。
 また娘が小さい頃、自宅のベランダに設(しつら)えた小さなテーブルに団子、果物、ススキを飾り、家族でお月見を楽しんだ。
 娘が大きくなった時に、このことを思い出してくれたらいいなぁと思っていたが、今は夜見(よみ)の国の人。
 あちらから、お月見をしている私たち老夫婦を眺めて、お地球(ホシ)見をしているかな。
 中秋の名月の頃になるとその光景を思い浮かべて、夜空を見上げてそっと手を合わせます。

※夜見の国=日本神話や聖書における死者の世界。
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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