hitomi's poem

hitomiの詩 part83 腕時計



 引き出しの隅で眠ってる、娘の形見の腕時計
 冷たく感じるメタルのバンド、シックな黒い文字盤
 小粒ながらもオシャレで重厚な、ブルガリの時計
 娘が夭逝してから、時を刻むのが止まっている
 撫でてもさすっても動くはずがないけど、手にすると心が揺れ動く
 娘と過ごした時間の中に浸ってると、思い出の一秒一秒が巻き戻る
 過ぎ去った時が積み重なって、涙となってこぼれ落ちた 
 もっとたくさん笑いあって、楽しく過ごすはずだった
 幸せな人生が、ずっと先まで続いているはずだった
 娘をサポートして、希望を叶えてあげたかった
 だが絶望の淵に沈んだあの日から、私は迷宮のさまよい人
 時計の針と私の思考は止まっても、時間は絶え間なく進む
 このままでは世間に取り残されて、生ける屍になってしまう
 時をさかのぼり思考を巡らした先に、ぼんやりと歩むべき道が見えてきた
 少しでも長く生きて、少しでも長く娘の後生を願う事
 長い針は私で短い針は娘、止まった二つの針は二度と重る事は無いが
 娘を偲ぶ事で、お互いの思いと思いが重なり合うだろう

※夭逝[ヨウセイ]=年が若くて死ぬこと
※生ける屍「シカバネ」=正常な心身作用を失って、ただ生きているだけの人。
※後生[ゴショウ]=来世で極楽に生まれること。来世の幸福。










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