hitomi's poem

hitomiの part28(年賀状)


書架で本を探していたら瞳が遺した本を見つけた。
瞳を思い出しながら本を手に取り何気なくパラパラめくった。
ページの間から挟まっていた一通の年賀状がはらりと落ちた。

裏面には「あけましておめでとう、旧年中は」とだけ書いてある。
つたない文字の書きかけの年賀状、ピンクのペンで書いていた。
一体、何を書こうとしていたのだろうか。
その続きは自分で想像して思いをめぐらす。
新年の抱負?お礼?挨拶?近況?他愛もない話?
これは仲の良い友達に書こうとしたが失敗してやめた?
ひょっとすると彼氏に出すはずだったのかな?
いや、あの頃はまだいなかったはずや。
それとも私が知らなかっただけなのかな?
色々と詮索をしては瞳の遠い昔を思い浮かべる。
表(オモテ)を見ると宛先はまだ書いていない。
一体、これは誰に出すつもりだったのだろうか。
その友達は、娘が亡くなったのを知っているのかな。
相手が分かれば、私が続きを書いて出してあげるのに…

いや待てよ、
瞳の数少ない手書きの文字。魂が伝わる大切な一品(ヒトシナ)。
見ていると温もりが感じとれる。
愛おしさがこみあげてきた。
これは大切に形見にとっておこう。

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hitomiの part29(夢の中)
夕べ久しく瞳と夢の中で逢いました
薄ぼやけたスクリーンの中に映し出された
瞳の姿が現れては暗闇の中に消えていく
なにげなく憂いを秘めた眼差しが
私に何かを伝えいような顔をしていた
でも、遠く離れていたので話せない
唇がかすかに動いているが聞こえない
声をかけるが通じなくて歯痒い思いに駆られた
言葉を交わしたいのに暗闇の中に消えていった

消えたはずの瞳がまた夢の中に現われた
微笑んでいるのか悲しんでいるのか見当が…
近くに居るのに手を伸ばしても届かない
せめて夢の中で優しく強く抱きしめたい
手をつなぎ瞳のぬくもりを感じたい
でも、無理だよね、夢の中なんだもの
ずっと独りでいると思うと切なくて
瞳のところへ行ってあげられないもどかしさ
淋しそうな顔をして暗闇の彼方へ消えていった

なんともいえない不思議な時間だった
淋しくしているのではと気にかかる
また逢いたいと思う、見たいと思う
また夢の中に出てきて欲しいと
瞳の遺影を見ては心の中で強く祈る


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