hitomi's poem

hitomiの(うた part13(雪だるま)

あれは22年前の冬、君が4歳の時だった。
午前3時、仕事を終えて外に出ると一面純白の銀世界。
薄暗い空から雪がしずしずと舞い降りていた。
山茶花(サザンカ)の枝に、白いショールみたいに覆っている。
車には白い布団をかぶせたように分厚く積もっていた。
静まり返る空間、人っ子一人いない往来。
しかし真夜中というのに辺(アタ)りはほの明るい。

久しぶりの墨絵景色の美しさを見せようと、
家でスヤスヤと寝ていた君を無理やり起こしたね。
眠い目をこすりながら、赤いガウンを纏(マト)って表に出ると、
初めて見る一面の白い雪景色にパッと目を輝かせ驚いていた。
眠気も忘れて白い綿を敷き詰めたような裏の空き地に下り、
まだ誰も踏み見入れていない白いキャンバスの上を、
私が一番乗りと小さな足跡で曲がりくねった線路の絵を描いたね。

冷たいと云いながらも小さな手を真っ赤にして雪をかきあつめ、
白い息を吐きながら雪をまるめてだるまさんを作った。
私も童心に戻り、一緒になって解けにくいようにかたく固めた。
顔のパーツを探しに家の冷蔵庫の中をあさった。
目はプチトマト、鼻はバナナ、口はミカン。
なんとなくしまりのないユーモアな顔になってしまった。

雪だるまは親子の絆を深めるためにくれた天からのプレゼントだ。

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