hitomi's poem
 hitomiの(うた) part2(旅立ちの日)

平成16年8月1日、朝5時50分


いつもの様に 病床の瞳を案じながら床につく



1時間ほど経過、レム睡眠に入った頃、



電話の呼び出し音が、非情にも鳴り響く



不安にかられながら、受話器をとった







8月1日、朝6時50分 


危惧(きぐ)通り、病院から「容態(ようたい)が急変したので、取り急ぎ来てください!」


病状悪化の知らせを聞いた私は、命に恵みを(ほどこ)す お天道(てんと)様に念じた


病院へ車を走らせながら私は、(まぶ)しく光り輝く お天道様に念じた



「どうか瞳を助けて下さい!助けて下さい!助けて下さい!奇跡を起こして下さい!」


空虚(くうきょ)になった頭の中に瞳の顔が、姿が、何度も何度も 浮かんでは消えた







8月1日、朝7時20分


やがて車は病院に。 はやる気持ちを落ち着かせ、病室へ一目散(いちもくさん)


瞳のベッドの(まわ)りには、いつもより大勢の医師、看護婦が…


私と妻はベッドの(ふち)にかけより、瞳の肩にそっと手を触れ 御仏(みほとけ)様に念じた



私と妻は周囲には目もくれず、瞳の手を握りながら 御仏様に念じた



「どうか瞳を助けて下さい!助けて下さい!助けて下さい!奇跡を起こして下さい!」


一心不乱(いっしんふらん)に病床の瞳の奇跡、回復を何度も何度も ()い願う、強く







8月1日、朝10時20分


無情にも血圧は下がる一方、騒ぐ胸中(きょうちゅう)、病室はなぜか静寂(せいじゃく)


先生に延命処置(えんめいしょち)を依頼し、(わら)をもすがる思いで 天の神に念じた



いかなる犠牲も払いますので、瞳だけはなんとかしてと 天の神に念じた



「どうか瞳を助けて下さい!助けて下さい!助けて下さい!奇跡を起こして下さい!」


願いむなしく耳に響く「ご臨終(りんじゅう)です」 信じたくない先生の言葉 焼きついて消えぬ




号泣(ごうきゅう)する妻 血の気の引いた瞳にとりすがり取り乱す



こみ上げる涙こらえ冷静をよそう私の目は


重くて熱いもので視界を(さえぎ)られる



無念さ、やりきれなさが 胸をしめつける







8月1日、昼12時50分



寝台車に乗せられた瞳 数人の看護婦さんに見送られ病院を後にする


変わり果てた姿で実家に戻った瞳 枕元(まくらもと)の線香がまだ不釣り合い


私と妻は 冷たくなった、瞳の頬を()で、そして手を合わせて念仏を唱えた



私と妻は天使のような顔の 瞳をのぞき込みながら手を合わせて謝った



「すまん瞳を助けられなくて!かんにんしてや!奇跡を起こせなくて!かんにんしてや!」



長い看病 及ばず終わったのかと もっと手を尽くせなかったのかと 悔いてやまず、ずっと…






平成16年8月1日の朝 娘・瞳は25年の間の短い生涯をここに閉じた

挿入曲:別離の詩 作曲:有村ただし


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