hitomi's poetry
想い出(つづ)り−10 炬燵(こたつ)
cici

炬燵に入りミカンの皮をむいていると、ふと思い出した。
去年の寒い冬、親子三人水入らずでテレビを見てたね。
そして、いろんな話題にいっぱい花を咲かせたね。
君は好きなダンスを極めたいと、夢を語ってたね。
あの時のあの輝いた瞳、ついこの間の事のような気がする。
この狭いのスペースが、家族の絆をつなぐ憩いの場やった。
離れて暮らしているので、たまに会うこの時が至福の時やった。 

沢山の友達がいてたのに、なんで孤独を選んだんや。
楽しかったあの団欒(だんらん)は一体なんやったんや。夢?幻?
君の写真を見る度に、悔しさがググッとこみ上げてくる。
君の悩みを深く追求する事なく、SOS信号に気づけなかった私、
真剣さが足りなかったのか、愛情が足りなかったからなのか、
それだけがいつまでも、深い悔恨にとらわれる。

hitomiよ、いつまでも私の側に居て欲しい…。
そしてまた、その笑顔で私を困らせて欲しい…。
そしてそのまま、私の前から消えないで欲しい…。
片時も脳裏から離れる事のない、君の面影。
hitomiよ君は今、私の胸の中で生きている。
そして優しく、微笑みを投げかけてくれる。
hitomiよ淋しなったら、いつでも帰っておいでよ、
そして一緒に炬燵に入って、あの時に戻ろう。

※至福(しふく)=この上もない幸福。
※悔恨(かいこん)=後悔して残念に思うこと。


























想い出(つづ)り−11 成人式
cici

寒さがひとしお骨身しみる1月の午後、
街には晴れ着姿の男の子、女の子。
そうか、今日は成人の日なんだ。
hitomiの成人式、あれからもう7年になる。
あの時は晴れ着を買ってやれなかったけど、
喜んで貸衣装の袖を通して選んでいる姿が愛おしかった。
個性的な髪型に艶(あで)やかな髪飾り、いつもより気合が入ったお化粧、
君の晴れ着姿、素敵だったよ。綺羅星のように輝いていたよ。
成長した雛(ひな)に目を細めながら、大きく羽ばたけと祈った。
私が成人式会場の市民会館へ車で送ったのを覚えているかい?
仲の良かった同級生に久しぶりに会えると楽しみにしていたね。
友達と一緒に記念写真、君はひときわ光っていたよ。
親の欲目かもしれないけれど…。
綺麗な着物に包まれ、カメラのレンズを見る君の目がキラめいていた。
私はこの記念すべき瞬間を、何度もシャッターを切りカメラに収めた。
まさかこれが最初で最後の晴れ姿になるとは夢にも思わずに…。
あの時は大人のスタート台に立ち、期待と不安を交錯させながらも、
将来に向けて夢をもっていた。胸を膨らませていた。
まさか5年後に、希望を絶つとは思っていなかっただろう。
現在、成人式の記念写真を「遺影」として居間に飾っている。
今日も何かを云いたそうに、私を見つめている。



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