私の兄にビデオテープを譲り受けた。瞳の小学校4年生の時の映像だ。
兄、姉の4家族と一緒に二泊三日で若狭へ行った時の思い出が詰まっていた。
私達夫婦は無休で店を営業していたので、毎年、夏休みになると兄の家に
娘を預ける事になっていた。従姉妹(いとこ)もいるので瞳も楽しみにしていた。
この年は大勢の家族で海水浴。おばあちゃんも一緒、姉の犬まで連れてきた。
朝早く4台の車に分乗、出発進行!眠い目をこすりながらも心は弾んでいた。
小浜市の田烏海水浴場は若狭湾では京阪神方面から一番近い所に位置し、
水がとてもきれいなビーチ。朝の9時位に到着、早速、シートを広げて朝食。
大きなおにぎりに大好きなウインナ、玉子焼き、etc。伯母の手料理に舌鼓(つづみ)。
真っ青の青空のもと、浮き袋に身を包み波にユラユラ揺られて気持ちよさそう。
うまく泳げないが臆する事なく、手足をバタバタさせて水に慣れ親しんでいた。
砂浜での砂遊び、山を作ったりトンネルを作ったり、夢中になって幼子に戻る。
夜には海岸で花火遊び。夜空を彩るファンタジーに歓声や、ため息が…。
連発花火は短時間に連続で発射音と火の玉を打ち上げ、景気良く華々しい。
夜空に大輪を咲かせる打ち上げ花火は、きらびやかで迫力があり見事だが、
チカチカと小さな光の花を咲かせる線香花火には、夏の夜の風情がある。
暗闇での線香花火、囲むその輪の中に浮かぶ瞳の笑顔、可憐でいとおしい。
民宿では豪勢な料理、みんなと一緒だと好き嫌いも言わずにおいしそう。
翌日は渡船で無人浜まで移動。船のヘリで跳ねる波しぶきに見入っている。
少し離れた目的地に到着。ゆれる渡船から降りるのにビクつきながらも嬉しそう。
他に1組の家族だけ。ちょっとしたプライベートビーチ気分でのんびり過ごせる。
煙に包まれてバーベキュー。魚介類に肉、野菜、この上もなく楽しいひと時だ。
この日も水の中ではしゃいだり、水中メガネで海の中を覗いたり、貝拾いしたり…
寝床では修学旅行の様にゲームをしたりお喋りしたり、そのうちに疲れて熟睡。
天使の様な寝顔、瞳には初めての体験ばかりできっといい夢をみているかも。
私はビデオを見ながら「よかったね、いい思い出があって」と胸を詰まらせた。
そして「生きていたらこれからもっと沢山思い出が作れるのに」と思いを馳せる。
私の目からは、温い涙がポロポロと間断なくこぼれ落ちた。
※臆(おく)する=気おくれする・おどおどするの意
※間断(かんだん)なく=とぎれることなく |