想い出綴り−6 瞳&弥生の珍道中 |
(弥生) |
瞳と初めて2人で遊ぶことになったある日、瞳が迎えに来てくれた白い
ラシーンに心ウキウキ乗り込んだ!
ルームミラーについた飾りやウインカー・レバーにぶら下げた大きな飾り
物を見て 「いろいろつけてるね〜」と言いながら、
「さあ、遊びに行こう!しゅっぱ〜〜つ」
車が走り出して30秒ほど経った頃、私は真っ青になりながら無言でシ
ートベルトをつけ固まっていた。そう、瞳の運転はその頃、ものすごく荒
かった・・・ジェットコースターなど“絶叫モノ”がダメな私は何回も、
「気をつけて!」だの「危ない!」とか「ギャー!」と叫んでいた。
優しい瞳は、それから毎回ラシーンに乗るたび、ちょっと運転が荒っぽ
くなった時は 「ごめん、今、アンタ怖くなかった?」なんて聞いてくれた。
ラシーンに乗って一番最初に遠乗りしたのは、夏に滋賀の琵琶湖バレ
イにあるスキー場で、野外音楽イベントを見に行きました。二人とも見事
に方向音痴。そんな二人が力を合わせて地図とフライヤー(チラシ)を見
ながら行ったのですが、まったく逆方向に車を走らせ、どこへ行くのやら
右往左往。2時間でたどり着くはずの場所まで5時間もかかりました。同
じローソンの前を5、6回も通ったり、林の中で迷子になったりでイライラ
も頂点に。
でも、やっとこさ会場についた瞬間、大好きな音楽が流れてるのを聞い
たら、満面な笑顔になるゲンキンな瞳でした。
2回目は和歌山の白崎海岸。もちろん道なんてわからない。でも前と
同じ失敗は繰り返したくありません。夜からのイベントなのに瞳は朝イチ
にラシーンを出発させました(笑)。
「これなら大丈夫!どんだけ迷子になってもちゃんと間に合い、始まりか
ら音楽聞けるよね」って。お互い目を見合わせて納得!
もっともラシーンで遠乗りしたのは、岐阜の根ノ上高原のイベント。その
日、コーナン(ホームセンター)に行きたいと言う瞳。岐阜に向かう為にせ
っかく朝早起きしたのに、わざわざ開店する時間まで待って近所のコー
ナンに向かった。瞳は「これ私が買う!これからずっと使えそうやん」とイ
キイキしながらテントと寝袋とアイスボックスを買った。ラシーンにたくさん
積めすぎて 「バックミラーが見えない〜」なんてボヤきながらもワクワク。
出発進行!
「でも岐阜ってどこなんやろなあ・・・?」不安げな二人、無謀な計画で
した。東名高速に乗ったはいいけど、名古屋高速に乗り間違え、どこへ
行くのやら。何時間かかったか、何回ガソリンを入れたか…。
でも、やっとたどり着いた根ノ上高原までの山を登る途中、ふと空を見
たら満面の美しい星空。思わず瞳はラシーンを降りて坂道で星を眺めな
がら、「来て良かったねっ☆★」って顔を見合わせてニッコリ!
会場に着いてからテントを立てるのに2時間も悪戦苦闘。朝まで音楽を
聞いて踊って、夕方までテントでグッスリ寝ました(^.^) |
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想い出綴()り−7 今日も奏でる「Let it be」 |
cici |
思い出の歌…、人生を長く続けると歳月(としつき)の数だけ思い出に
残る歌がある。特に音楽が好きな私だけに…。
その中で、私にとって一生付き合っていかなければならない思い出の
曲が出来てしまった。
昨年の夏、25歳の若さで永眠した娘の部屋を片付けていた時、テー
ブルの片隅にあった小さな黒い箱をみつけた。年寄りながらも好奇心
旺盛な私は、箱のツマミを捻ってネジを捲いた。薄暗い静寂の部屋に
静かにメロディーが流れ出した。♪・・・
ビートルズのヒット曲「Let it be」である。
思い返せば2年前、娘が「Let it be の譜面あれへんか」と云ってきた
ので一生懸命、本棚や押入れの中をあさった記憶がある。
貧乏性の私に家内は、「何でも置いとくから、家の中がスッキリせえへ
んねん」と常々苦言を呈していたが、この時ばかりはモノを捨てずに溜
め込むクセが功を奏し、古雑誌の中から譜面を探し当てる事ができた。
「これはお父さんの青春時代に流行った曲や、何で?」「うん、彼氏が
好きやねん。ギターで弾こと思てんねん」…娘の瞳(め)が輝いていた。
ギターは、独り暮らしの娘が淋しい時の気晴らしにと、私が持っていた
内の1本を与えたモノだ。時々、ギターを弾いているんやなと、内心、嬉
しく思えた。
その娘、今は仏壇の中。拝礼後、安らかに眠れと、毎日、オルゴール
のツマミを捻る。
今日も奏でる「Let it be」のメロディー。青春時代は夢とロマンを与え
てくれた応援歌だったが今は涙を誘う鎮魂歌。
独りの時、ボロロンとギターをつま弾く。あの時は楽しく感じた曲、今
は虚ろに響く。
私はこの曲を墓場まで持っていこうと思っている。天国で娘とデュエッ
トする為に…。 |
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