hitomi's poetry
想い出綴り−42 魔女の宅急便
cici
♪あのひとのママに会うために 今ひとり列車に乗ったの〜
店で暇を持て余していたら、有線からユーミンの『ルージュの伝言』が流れてきた。
この曲を耳にすると思い出すのが、スタジオジブリ作品のアニメ映画『魔女の宅急便』である。
主人公のキキが箒(ホウキ)にまたがり、海の見える町の空を自由に飛び回っている光景が目に浮かんだ。
瞳が子供の頃、映画は何度も一緒に行ったがアニメは子供向けなのでほとんど覚えていない。
しかし『魔女の宅急便』だけはよく覚えている。
大人でも楽しめたし、映画と『ルージュの伝言』が結構マッチしていて印象が深かったからだ。
だから『ルージュの伝言』を耳にすると『魔女の宅急便』を思い出し、そして瞳を思い出す。
キキの相棒に、ちょっぴり生意気でいじわるな性格だがどこか憎めないジジという黒猫がいた。
この影響かどうかは分からないが、瞳が独り住まいの時にココロという黒い猫を飼っていた。
ジジはキキと会話していたが、瞳もココロとお話をして独り暮らしの寂しさを紛らわしていたに違いない。

作文・TOPへ戻る

































想い出綴り−43 テレビのリモコン
cici
 店のカウンターバック棚の引き出しを整理していたら、型の古いテレビのリモコンが出てきた。
 瞳の部屋にあったテレビを店でモニターとして使っていた、いわば瞳の形見のテレビのリモコンだ。
 そのテレビを見ながらカラオケを歌っていたら時々瞳が画面に浮び、在りし日の面影を偲びながら歌った。
 「マスターの歌は感情がこもってるネ」と時々お客さんは言うが、歌詞にではなく瞳への思い入れだった。
 6カ月前にお客さんが歌っている最中に、テレビがブツッと切れて画面が真っ暗になってしまった。
 この店に来てから9年間、そして瞳が生前に使っていた期間を合わせると、かなり長い間使っていた。
 だから「もう、御いとまを下さい」と、テレビが白旗を上げたのに違いない。ほんとによく働いてくれた。
 「長い間ご苦労様」と心の中で感謝の意を告げて電気屋さんに引き取ってもらったが、リモコンは残していた。
 リモコンを手に取りながら、瞳がテレビを点けたり消したり、チャンネルを変えたりしていた光景を思い浮かべた。









●back

●composition-top

●top-page

●next

MYホームページ 愛netコミュニティ