hitomi's poetry
想い出綴り−67 帽子

cici
 妻とショッピングモールを歩いていた時、こじゃれた帽子屋さんの前に差し掛かると妻は店に入っていったので私も後について入った。
 「アンタ、この帽子を買いや。紺色のコートに合うわ」
 「帽子はぎょうさん持ってるからいらんわ」
 「青色の服にも合うから、この帽子を買いや」
 「いらんて」
 「そんなに高くないから買いや」
 いつもながらうるさく言うので根負けをして買ってしまう。
 当初、私は阪神タイガースのキャップと黒色のハットを持っていたが、ハゲ隠しの為なのか薄毛が目立ち始めてから妻が「あの服に合うから」とか「この服に合うから」とか言って、よく私に帽子を勧めるようになった。これでキャップとハットを合わせて13個になった。
 そういえば、14年前に亡くなった瞳の遺品を片付けていた時に帽子が40個以上もあったが、帽子好きは妻に似たのかな。
 いや、そうでもない。妻は洗濯物を干す時に紫外線を防ぐ為にかぶる帽子1つしか持っていない。
 でも、お洒落なところは妻に似ていてファッションにはかなりうるさい。
 バッチリと帽子で決めた瞳の写真をたくさん貼ってあるアルバムを広げて、若かれし日の思いを馳せた。




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