シンプルライフ・ウオッカ
70年代のアメリカで、バーボンを抜いてシェア第1位
を占めた酒が、ロシア生まれのウオッカだったことを
ご存知でしょうか。無色、無味、無臭。あくまでも清
らかで、心地よい酔い心地。そんなウオッカがカクテ
ル党に愛されたのはもちろん、ヤングのライフ・スタ
イルとも結びついて“白色革命”と呼ばれるブームを
巻き起こしたのです。「戦後のフランスで特筆すべき
ものは、ブリジッド・バルドーとモダン・ジャズとウオ
ッカである」といったのは、かのパブロ・ピカソ。スラ
ブ農民の素朴な地酒だったウオッカが、わずか半
世紀で急成長し、世界中に影響を及ぼしたというの
も、他に例を見ないほどです。そのキッカケになった
のが1917年のロシア革命。これによって各国に亡
命したロシア人達が、ロシア・ウオッカのノウハウを
各地に伝えたのが幕開けです。
こうして、とりわけアメリカで、しかもカクテル時代と
いういいタイミングに恵まれ、ウオッカは世界の酒と
しての地位を得たのです。今では、すっかり定着し
た人気といってよいでしょう。 |
ウオッカのたのしみ方
@そのまま飲むる
ウオッカの価値は、あくまでもピュアなところにあり
ます。連続式蒸留機で作り出されたスピリッツを、
どれくらい丹念に白樺の木炭で濾過し、磨きぬき、
ピュアにするか。そこまでピュアな酒は、やはりス
トレートで試してみたいものです。ウオッカの人気の
秘密は、ストレートのうまさにあります。
無味無臭というと没個性を連想しがちですが、個性
的な味わいがなくて、なんの魅力があるのでしょう
か。好みのグラスに徹底的に冷やしたウオッカを適
量注ぎ、ゆっくり口に含みます。とろっとした口当た
り、熱くドライな喉ごし。無味無臭の中に、キラリと
光る個性を味わって下さい。
A割って飲む
もとろん、オンザロックスOK。ソーダ、トニックウォー
ター、ジュース、コーラ、ジンジャエール、適量のウ
オッカを注いだタンブラーに満たせばそれでOK。
クセのないウオッカだから、ハードにするもソフトに
するも自由自在です。材料はすべて、冷蔵庫で冷
た〜くしておきましょう。 |
ウオッカ生産はアメリカが1位
ウオッカと言えばロシア生まれの酒。しかし生産量
が一番多いのはアメリカです。理由はカクテルのベ
ースとしてジンよりもウオッカが流行しているからで
す。カクテルで一番愛飲されているマティーニも、ウ
オッカのみで作ったりするほどで、ウィスキーを凌い
で、消費量でも1位となっているそうです。本家本元
のロシアでは、アル中が多いので、なんとかウオッ
カ消費量を減らそうという動きもあったりするのに、
面白い現象です。 |
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“お水ちゃん”の誕生
ウイスキーもブランデーも、その語源をたどっていくと「生
命の水」を意味するように、ウオッカの語源も「生命の水」
を意味するズィズネニャ・ヴォダという言葉にたどりつきま
す。この“ヴォダ”が愛称形になって“ウオッカ”…「お水ち
ゃん」となったもの。
蒸留酒のルーツが、多くは錬金術師たちの蒸留装置か
ら生まれ、「生命の水」と呼ばれた事と一致します。
ウオッカになる前、つまり蒸留される前の酒は、おそらく
ライ麦のビールか、蜂蜜で作るミードだったろうと思われ
ます。
やがて新大陸から、トウモロコシやジャガイモが渡米し、
ロシア各地に植えられるようになり、ウオッカの原料もこ
れらが主流になります。18世紀には、できあがったウオ
ッカ原酒を白樺炭で濾過するようになり、皿に19世紀に
は連続蒸留機が登場して、今日のような無味無臭、あく
までも清らかでシンプルなスピリッツ“お水ちゃん”の誕
生を迎えます。いかにも「水」のような“お水ちゃん”の威
力は、1812年のナポレオンのロシア遠征で武勲をたてて
モノをいいます。60万ナポレオン軍と、迎え撃つロシア軍
との戦いは、名にし負うロシアの冬を舞台としたブランデ
ーとウオッカの戦いでもあったのです。身を暖め、力を奮
いおこす武器は、両軍の酒だったというワケ。かくして、
遠征というハンデからブランデーが底をついたナポレオン
軍が、無尽蔵のウオッカを背景としたロシア軍の前にギ
ブアップ。以来ナポレオンは徹底的につき7が落ちて敗
走の道をたどる事になります。大英帝国の海軍の士気を
鼓舞したラム、ナポレオン軍を支えたブランデーとともに、
ウオッカは世界史に重要なページを記した酒です。 |
ウオッカベースのカクテル
カクテルのレシピ(材料と作り方)は絶対的なもの、と堅苦
しく考える必要はないのです。むしろ、自由に考えたから
こそ、これほど沢山のカクテルが誕生したのです。なか
でも人気があるのが、ベースになるスピリッツを、色々変
えてみるやり方。なかでも、応用範囲の広いのがウオッ
カです。ジンの代わりに、ラムの代わりに、と、色々なカ
クテルベースに使われます。といっても、代用品というわ
けではありません。無味無臭というクセの無い個性と、
冴えた味わいが、パートナーとなる材料の個性をぐんと
引き立てるからです。
そこで、マテニーのベースをはじめ、ジンベースのカクテ
ルなら、全てウオッカベースでも試してみよう、ラムベー
スはどうだろうか、という具合に、飽く事を知らないカクテ
ルファン達が、ウオッカを試してみた、というのがブーム
の始まり。もちろんウオッカならではのカクテルの傑作も
沢山あります。一時流行ったトロピカル・カクテルのベー
スとして、北で生まれたウオッカが南で愛されている、と
いうのも楽しい事ですね。
主なウオッカベースのカクテル
ブラディ・マリー、スクリュードライバー、マルルゥー、ソル
ティ・ドッグ、モスコー・ミュール、チチ |
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