ジンジンする話
洋酒というのは、どれも実によくできていると思いませんか?
特に“ジン”。ジンとくる響き。たちのぼるネーデルランドの森
の香り、泉のような清らかさ、そしてハートを燃やすような炎
の味わい。どれもこれも、ジンとくる魅力です。このジンの由
来はジン独特の香りの由来でもあるジュニパー・ベリー(杜
松ねずの実)のフランス語、ジュニエーブルがルーツで、英国
に渡ってGINと短縮されたもの。
そもそもは、利尿、解熱、健胃剤として効あるといわれてい
る杜松の実の成分をスピリッツに抽出した薬用酒としてオラ
ンダの薬局から売り出したのが始まり。これはうまい、という
ので病気が治っても愛飲する人が増え、噂を聞いて健康な
人までが愛用し始めて、あっという間にヨーロッパ中に広ま
ってゆきました。古今東西、酒飲みというのは物見高いとい
うか、うまい酒を発見する超能力を備えているようです。
こうしてスコッチの本場でも、さすがの保守的なジョンブルま
でが新しいこの酒に舌を巻き、いざわが国でも製造すべし、
という事になりましたが、そこはジョンブル気質。自分たちの
好みに合わせてジンを次第に変え、いわゆるロンドン・ドライ
・ジンなるものを完成させたのです。今や、ジンといえば、こ
のロンドン・ドライ・ジンの事をさすようになりました。 |
三人の恩人をもつ酒。(8/22)
ジンには三人の恩人がいる…といわれます。生みの親のオ
ランダ人、ロンドン・ドライ・ジンによってジンを世界的な酒に
磨き上げた育ての親ともいうべき英国人。そして最後は、ジ
ンにカクテル・ベースのNo.1という栄光の地位を与えたアメ
リカ人です。
なかでも、ジンの栄光はカクテルの王者マテニーの登場に
よってとどめをさします。それだけに、このマテニーには一家
言をもつ人が多く、自らの好みをうるさく主張し、自己流のレ
シピを譲ろうとしません。いわば、バーテンダー泣かせのカク
テル。裏を返せば、もっとも腕の振るい甲斐のあるカクテル
です。
当初はジンとベルモットの割合が1対1、それもベルモットは
甘口のイタリアンでした。やがて次第にドライになり、ベルモ
ットも辛口のフレンチ・ベルモットに変わります。ジンとベルモ
ットの割合も、2対1から15鯛までと、人それぞれのマテニー
を主張するようになり、甚だしいのになるとベルモットはチラと
臭いをかぐだけ、いや、チラとベルモットのことを考えるだけ、
というのさえあるほどです。最近では、ジンのオン・ザ・ロック
スに少量のベルモットを加えるマテニー・オン・ザ・ロックスが
人気。これほどジンがカクテルのベースに好まれるのは、ジ
ンがどんな相手とも相性がいいことはもちろん、相手の持ち
味を見事に引き立てるからです。ジンは、穀物を原料にして
発酵・蒸留した高濃度の純良スピリッツに、杜松の実をはじ
めとした香気植物を加えてさらに蒸留してつくられ、あの独
特の香気と口当たり、まさに“ドライ”な酒としての生命をも
つのです。 |
ジンは“百薬の長”として発売された
英国を旅行して気づくのが、スコッチの本場でありながら、一
般庶民の生活の中に、ウィスキーはほとんど姿を見せない。
大英帝国で、スコッチはもっぱら輸出用となっている。
代わりに、パブでは、ジンとビールが幅をきかせている。ジン
ト
ニックが、日本の水割りの様に愛飲されている。ジンの起源
はオランダ。16世紀の半ば頃、ライデン大学のシル
ルヴィウス教授がライ麦を原料にした蒸留酒を作り、杠松ねず
で香りをつけてジェネヴァと名付けた。これがジンの元祖。
このジン、最初は薬品として薬屋で売られたという事で、東
洋でも、杠松は利尿薬として用いられる事を考えても、シル
ヴィウス教授は、酔っ払いを製造する為に、ジンを考案した
のではなかったらしい。
さて、オランダで生まれたジンは、イギリスに渡って製法に
改良が加えられ、透明でさわやかな風味を持つロンドン・ジ
ンに生まれ変わった。「ドライ・ジン」といわれる辛口のジン
の事。
ジンはカクテルのベースとしても最も多く用いられるが、ジ
ン・ベースの最もポピュラーなカクテルがドライ・マティーニ。
ジン、ベルモット、それにオレンジ・ビター。食前用の代表的
な辛口のカクテルで、ウィスキー・ベースのマンハッタン(甘
口)と双璧。 |
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ジンのたのしみ方
@そのまま飲むる
独特の爽やかな香気と味をたのしむには、やはりストレート
です。マテニーの最もドライなものは、限りなくジンのストレ
ートに近いわけでいってみればカクテルの世界への旅立ち
は、これかも知れないなと思わせる1杯です。
好みのグラスに、シングルでもダブルでも、適量のジンを注
ぎます。ジンは思いきり冷やしておく事。冷やすほどにスッ
キリとまろやかな口当たりになり、とろりとした舌ざわりにな
ります。また、好みによってレモンスライスを添えますが、人
にすすめる時はレモンを中に入れず、相手の好みに任せま
しょう。
オン・ザ・ロックにする時も、ボトルごと冷やしておきます。冷
やしておくと氷の負担が軽くなる為、わずかな時間で溶けて
薄まる事が避けられます。
A割って飲む
カクテル・ベースのNo1といわれるだけあって、どんな飲料
で割ってもピッタリきます。好みによって、合わせ方により、
マイルドにもなればハードな味に仕上がるところがジンの
魅力です。
タンブラーに適量のジンを注ぎ、ジンジャーエール、コーラ、
トニックウォーター、ライムジュースなど、好みの清涼飲料で
満たせば出来上がり。この場合も、ジン、清涼飲料ともによ
く冷やしておく事を忘れずに。爽やかでスッキリとした口当
たりが楽しめます。 |
ジンベースのカクテル(8/22)
シャープでクールな切れ味が身上のドライジン、都会派のカ
クテルの、あの洗練された感覚の決め手です。ジンといえば
マテニーから話を始めるのが順序というもの。
このカクテルの王者にも時代とともに流行があって、今アメリ
カではオン・ザ・ロックスの人気が圧倒的です。配合の妙味
と、気長に飲める気楽さとが、アペリティフだけでなく、どんな
時間にも通用するのが魅力。これなら、自分好みのマテニー
を簡単にモノにできそうです。
もちろん、限りなく純粋ドライジンに近づこうとするマテニー純
血主義を追求するのも結構。ジンの魅力は、ハード一点張り
ではなく、優しく、ソフトな一面にもあります。最近、都会の夕
刻に流行のトワイライト・ドリンクスにも、ジンは欠くことのでき
ないカクテル・ベースです。トニックで、ソーダで、ペリエで…
何で割っても、爽やかさを引き立て、女性にも気軽に楽しめる
優しいお酒に変身してしまう、なんとも心憎いばかりの紳士
的な性格。さて、今宵はドライジンをテーマに、色々ミックス
しながら、最愛のカクテルを発見してみる、なんてプランはい
かがですか?
主なジンベースのカクテル
ジン・フィズ、シンガポール・スリング、マテニー・オン・ザ・ロッ
クス、ジン・ライム、ジン・ペリエ、オレンジ・ブロッサム |
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