ブランデーのコニャックとナポレオン
コニャックとは、フランスで最も優良なブドウ酒を生産するボルド
ー市北部のシャラン県とシャラント・マリチーム県だけで作って
いる白ブドウ酒を蒸留して作ったブランデーの事で、数あるブレ
ンデーの中でも、うまさの点で最高とされている種の事である。
コニャックに次いで上等とされるものがアルマニャックである。
ところで、ナポレオンの事を、日本酒での「大関」とか「菊正宗」
の様に、ブランデーの銘柄名だと思っている人が意外に多い。
確かにナポレオンは最高級のブランデーと認識するのは間違
いではない。1800年代のはじめ、ナポレオン皇帝の統治下、フ
ランスでは、ことのほかブドウの作柄が良く、このブドウから作
ったブドウ酒、更にそれを蒸留して作ったブランデーがナポレオ
ンに気に入られ、その優秀さに折り紙をつけられた事から「ブラ
ンデーはナポレオン」の名が高まったという訳。従って、ナポレ
オンの名をつけたブランデーは1社だけではない。特にコニャッ
ク地方の業者が好んでこの名を冠する様である。
上は数十万円から下は一万円以下まで、色々なナポレオンが
ある。中でもレミー・マルタンやカミュ、マーテル、オタールのナ
ポレオンが有名。
コニャックで有名なのが、上記の銘柄以外ではヘネシー、クル
ボアジェ、リシャールなどがある。 |
ブランデーの香りの秘密
ブランデーには一種独特のムードがあります。静かな夜更け
にゆったりとした椅子に深々と腰をかけ、パイプをくゆらせなが
ら、ブランデーを愉しむ…。そんな映画のワンシーンが浮かん
でくるほどブランデーはリッチな雰囲気を持っています。他の
お酒では味わえないあの芳醇な香りがブランデーのムードを
いやがうえにも高めているのでしょう。
あの馥郁ふくいくとした、香りにワインでいうところの「オリ」も一役
かっています。ブランデーはワインを蒸留させて作りますが、そ
の際、原料ワインのオリ引きを行わず、蒸留を行います。オリ
に含まれる酵母菌から微妙な香気の一部が出来るのです。
しかし、あの芳醇なブランデーの香気は、なんといってもオーク
の樽での眠りから生まれて、更にブレンディングで磨きをかけ
られるのです。
|
ブランデーはくつろぎのウォーミングアップ
ブランデーのクラシックな愉しみ方は、食後のくつろぎのひとと
きに、スニフター(ブランデーグラス)を掌で包み、その体温で
ゆっくりと温めるところから始まります。
時の流れを愉しむように、ゆっくりと。やがて沸点の低い繊細
な香りが立ちのぼり始めます。まるで、くつろぎの時間を、自
分の掌で醸し出していくような気分です。
温度とのデリケートな関わりの中で香りを愉しむブランデーの
為に、グラスを温める方法も、昔からいろいろ試されてきまし
た。もっとも、季節による気温の差などもあり、神経質に温度
を気にする必要はありません。ブランデーをウォーミングアップ
する事よりも、“くつろぎの気分”をウォーミングアップする事の
方が、ブランデーを愉しむ大切な要素だからです。
こうして満ち足りた食後のひとときを、1杯のブランデーで締め
くくる…グラスを温める事は、そんなセレモニーでもあります。
|
ブランデーベースのカクテル
味覚は人それぞれで異なりますから一概にはいえませんが、
カクテルにT・P・Oがあるとすれば、辛口はアペリティフ食前
酒)、甘口はデザート、またすっきりした口あたりのものはオー
ルディ・タイプと分ける事ができます。ブランデー・ベースのカク
テルは、どちらかというと食後や、食事とか関わりなく楽しむ、
という人が多い様です。
カクテルをより楽しくしてくれているものにネーミングがありま
す。エピソードを知る事で、親しみがますます深まっていくのも
のもカクテルならではの事。例えばブランデー・ベースの代表
的なカクテル「サイドカー」には次の様な2つの話があります。
ひとつは、第1次世界大戦中にドイツの猛攻を受けたフランス
の将校が、サイドカーに乗って退却中に、残り少ないブランデ
ーにありあわせのキュラソーとレモン・ジュースを入れて飲んだ
という話。
そしてもうひとつは、サイドカーに乗ってフランスに進軍してきた
ドイツの将校が占領した家の酒棚のものを調合してつくったと
いう話。
いずれにしても敵、味方の別なく愛されたという話なのです。
主なブランデーベースのカクテル
サイドカー、エッグ・ノック、ホーセズ・ネック、アレキサンダー、
ビトウィン・ザ・シーツ、スティンガー・カクテル |
|
ファイブ・スターとVSOP
ブランデーのラベルには星のマークが表示されている。
この星型(王冠形の場合もある)が多い程、貯蔵年数が長く上
等のブランデーという事になる。
スリー・スター(三ツ星)貯蔵6〜8年
フォア・スター(四ツ星)貯蔵8〜10年
スリー・スター(三ツ星)貯蔵10〜12年
ラベルにはまたVSOP等と横文字が表示されている。
VはVeryで「きわめて」の意。SはSuperiorで「上等」。
OはOldで「古い」。PはPaleで「色が濃い」という意味。
やはり貯蔵年限を表示していて、
V・Oは12〜15年
V・V・Oは15〜18年
V・S・Oは18〜20年
V・S・O・Pは25年以上
尚、X・OとはExtra・Oldの意味で最も古く、貯蔵年限は
70年
以上といわれています。 |
ナポレオンを飲めなかったナポレオン?
「世の辞書に不可能はない」と断言したナポレオンですが、彼
が本当においしいナポレオン・ブランデーを飲めたかどうかは、
いささか疑問です。現在、ナポレオン・ブランデーといえば、品
質の目安として使われたり、商品名の一部としてよく使われま
すが、しかしその由来はナポレオンU世が誕生したその年、
「1811年もののブランデー」の事をさしたのが始まりです。
ナポレオンのその後の凋落と、彼が10年後の1821年に没した
事を考え合わせると、本当に熟成したナポレオン・ブランデーを
飲めたかどうかは疑問、といわざるを得ません。ナポレオン時
代の昔からブランデーづくりは気長な仕事です。その味と香り
は時が磨くといわれるほど時間がかかります。
まず、ブランデーに適したブドウを主にワインを作ります。この
ワインを2度にわたって蒸留します。初回でアルコール度約25
%にし、これを再蒸留して約60%までアルコール度数を高めま
す。しかしこのブランデー原酒はそのままでは荒々しいだけの
スピリッツにすぎません。そこでこれを樽に詰め眠らせます。
長い年月寝かせる事で若い原酒は重厚で芳醇なブランデーに
熟成していきます。こうして出来たものを一定の味に整える為
にブレンドし、更に別の樽で眠らせます。この眠りから覚めて、
ブレンデーはようやくビン詰めされ、出荷されるというわけす。
ブランデーは樽の中で熟成中に毎年数%が蒸発してしまいま
す。それを昔から「天使が飲んだ」とよんでいます。
|
ブランデーの飲み方は?
ブランデーの本来の飲み方は、香りを大切にします。その為、
ストレートで飲むのが一番ふさわしいでしょう。
ストレートは、専用のブランデーグラス(スニタフー)で飲むのが
普通です。まずグラスに1/5ほどブランデーを注ぎます。掌で
包むようにしてゆっくり鼻に近づけ、香りを愉しみます。そして、
静かに口に含みます。舌の上をゆっくりと転がして味わい、奥
歯でかみしめ、しかるのちに喉へ流す、というのがオーソドック
スかつエレガントなブランデーの愉しみ方です。
水割りは、オールドファッショングラスか大型ブランデーグラス
に氷を2〜3個入れ、ブランデーを注ぎ、ステアするだけ。
オン・ザ・ロックはファッショングラスまたはブランデーグラスに
氷を2=3個入れ、ブランデーを注ぐだけで飲む。おいしく飲む
コツはアイスピックでかいたばかりの尖った大型の氷を入れて
飲む事。氷が溶けにくく、しかも見た目が美しいからである。
ソーダ割りはシュワーと広がる清涼感がたまらない。タンブラ
ーに氷を2〜3個入れ、ブランデーを注ぐ。そしてよく冷えたソ
ーダかジンジャエールを適量(ブランデーの2〜3倍)入れ、軽
くステアする。若い女性にも好評です。
ホット・ブランデーは、中型のタンブラーに適量(45ml位)のブ
ランデーを入れ、約2〜3倍の量のお湯を注げば出来上がり。
食欲増進に、また眠りにつく前に最適の飲み物。
ホット・ブランデー・タディ好みにより、シュガーを入れる。
ホット・ブランデー・スリングはレモンスライスの厚切りを1片加
え、このレモンをつぶしながら酸味を調整して飲む。
カフェ・ロワイヤル
ホットコーヒーのカップの上に角砂糖をのせ
たスプーンをかざし、ブランデーを注ぎ、それに火をつけます。
炎が適度に立ったらそのままコーヒーの中に沈め、ゆるやか
に混ぜて飲む。
他にカクテルのベースや紅茶に軽くたらしたりして使用。 |
|