●慕嬢詩『花火解禁』





 先日、テレビで「公園での花火を解禁する自治体が増えている」というニュースを見た。
 思えば2000年頃から、公園での花火は火災ややけどの危険、騒音や煙、ごみの放置などによる近隣住民への迷惑を理由に、全国各地で禁止されるようになった。
 特に打ち上げ花火や爆竹はもちろん、一部の自治体では手持ち花火さえ認められなくなり、夏の風物詩は少しずつ居場所を失っていった。
 ところが近年、「子どもたちに花火をさせてあげたい」「気軽に花火を楽しめる場所がなくなった」という声が多く寄せられ、条件付きではあるものの、公園での花火を認める動きが広がり始めているという。
 そのニュースを見ながら、私はふと昔の夏へ引き戻された。
 娘がまだ小さかった頃、夕暮れになると家族で近所の公園へ出かけ、花火を楽しんだものだ。線香花火をそっと持つ小さな手。手持ち花火を振り回して光の輪を描いたり、パチパチと弾ける火花に歓声を上げる声。
 夜風に娘の喜ぶ笑顔が揺れた。その笑顔を見ているだけで私たち夫婦も幸せな気持ちになった。
 娘の夏休みの日記には、何度か花火のエピソードが綴られていた。きっと娘の心にも、小さな夏の思い出として刻み込まれたことだろう。
 テレビの画面には、花火を楽しむ親子の姿が映っていた。
 パチパチと弾ける花火の音とともに花火の光に照らされていた幼い娘さんの笑顔。嬉しそうに目を輝かせていた姿は40年ほど前の娘と同じだ。
 チリチリと燃える線香花火の火玉のように、小さくなったはずの思い出が再び明るさを取り戻し、胸の奥でやさしく揺れた。
 「花火解禁」のニュースは、私にとって、もう戻ることのない夏の日々と、かけがえのない家族の時間を思い出させてくれる、小さな導火線だった。
 
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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