●慕嬢詩『焼き芋のぬくもり』


 今年は暑く長い夏がようやく終わったと思ったら、秋と感じる間もなく、いきなり寒くなってきた。
 物思いにふける間もなかったが、朝風に揺れる花の周りをアゲハ蝶やトンボが舞い、つかの間の秋の移ろいを感じた。
 秋と言えば食欲の秋。
 食欲をかきたてるのは、夏の食欲不振からの回復や、冬に備えて栄養を蓄えようとする体の自然な働きに加え、この時期ならではの豊かな旬の食材が持つ特別な魅力があるからだ。
 昨日もスーパーの入り口で漂う焼き芋の香りに誘われ、妻とひとつずつ買った。
 ホカホカの焼き芋を二人で頬ばっていると、娘と三人で焼き芋を食べていた情景がふと浮かんだ。
 ホクホクとした食感や、しっとりとした上品な甘みに、娘は「栗みたいや」と目を細めてモグモグしていた。
 おいしいものを家族で食べる――その何気ないひとときこそが、何よりも尊く、心をあたためてくれる幸せの光景だった。
 焼き芋の湯気の向こうに、今も変わらぬ家族のぬくもりが見えた気がした。

※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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