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ベランダに出れば風が頬を撫でる
ひらひら降りてきて目を楽しませる
黄色から橙(だいだい) 赤へと染めている
「長いお役目、ごくろうさん」
暖色系の衣装をまとった訪問者
心地よい温かさに胸がゆるんで
娘のぬくもりをふと思い出す
落ち葉が夕暮れと重なるころ
しんみりとして郷愁を誘う
「ホラ見てごらん、きれいだね」
二人で喜びを分かち合いたかったな…
今も胸の奥で娘の顔が浮かぶ
過去を振り返りながら風に問いかければ
笑っていた日々が呼び覚まされる
じんわりと心の中を整理するように
季節はそっと次の色を運ぶ
あの日のぬくもりが、まだ消えなくて
父でいられることを教えてくれる
ベランダに接する大きな桜の木
枝から離れた葉は手を振るように舞う
黄色から橙(だいだい) 赤のグラデーション
「ホラ見てごらん、きれいだね」
その声が今も風にまぎれて響く
桜紅葉よ、どうか伝えて
父は今日も元気でいると
春に逢えずとも秋に微笑む
あなたがくれた最後のぬくもり
心の奥で燃えている
ああ、桜紅葉
あなたの色に包まれて
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※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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