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先日の土曜日午前9時半、散歩で旧堺港の遊歩道に足を踏み入れると目に飛び込んできたのは予想外の光景だった。
ざっと見積もっても1000人を超える長蛇の行列が灯台の方へと延びていくのを目の当たりにして「すごい人の数やね」と妻は感心しきり。
昨年もこの大行列に遭遇して驚いたので、帰宅後にネットで調べた事があった。
それは『メトロック2024大阪』という野外ロック・フェスティバルで、2日間で50組のアーティストが出演、約4万人の観客を動員した。
会場は堺浜にある“海とのふれあい広場”だが、そこは交通の便が悪く南海本線堺駅に近い大浜公園からシャトルバスを運行、その連絡路にこの遊歩道が利用されている。
私たちは、人込みをかき分けながらいつもの灯台とは逆方向の龍女神像が建つ方へ歩いていった。
その道すがら、対岸の大浜公園へ向かう大勢の列がどんどん伸びていく様子を何度も見ながら、「いつ途切れるんやろね」と妻は興味津々。
「この音楽フェスは夜の8時までで、推しのアーティストの出演に合わせて行く人もいてるから、ある程度の時間までは途切れることはないで」
「へえ、そうなんや」「瞳が生きてたらこの列の中にいてるやろな」「ホンマやね、友達と一緒に」。
娘はロックファンで遺品の中には多量のCDやDVDがあった。だからこのようなイベントにはほとんど言っていいほど参加していた。
想像を巡らせると、娘が友人たちと一緒に会場で歓喜し、音楽に身を委ねる姿が目に浮かんできた。
そしてまた、娘がここにいれば、彼女の笑顔や興奮を共有できたかもしれないと思うと、複雑な感情が交錯した。
と同時にこの瞬間を通じて感じたのは、生命の輝きと音楽が人々を結びつけ、喜びを分かち合わせる力の大きさだった。
娘がいないのが残念ではあるが、それでもこの場所で娘と共にいるかのように思い出を振り返ることができて喜びが込み上がった。
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