慕嬢詩『あだ名』

 妻と週に5日、旧堺港の遊歩道を散歩している。ここは信号がなく、人通りも少なく、眺めが広々としている為、穏やかでゆったりした気分で歩ける。
 毎回同じコースなので風景に変化がなく、時々退屈しのぎに妻と散歩中に出合う人のあだ名をつけている。
 毎日すれ違う小柄でポッチャリの「コロコロさん」、腕を振って歩くので「フリフリさん」、青いパンツの「青パン」、年中、片手だけ手袋を着用の「手袋さん」。
 時々出会う人では、後ろ向きで歩く「うしろさん」、スマホ片手に歩く「スマホさん」、自転車の荷台にミカン箱を乗せている「紀伊国屋」、たたずんで海を眺めている年配の「佇むおっちゃん」。
 当初よく見かけた人が最近は見かけず、逆に新顔の人など様々な人と出会ったが、歩き始めて約3年の間にかなりのあだ名を付けた。
 因みに私の学生時代のあだ名は有村なので「アリちゃん」、妻は旧姓の中井をひっくり返して「いなか」、娘は「ありんこ」だった。
 最近、学校などのコミュニティでは「あだ名禁止」にして、下の名前や上の名前に「さん」をつけて呼ぶというルールが決められているところもあるが、私たちの世代は、友だちとあだ名で呼び合うのは当たり前。
 あだ名は、時には愛情が込められ、時にはユーモアを伴って与えられることもあり、友人や家族の間で使われることで絆が深まる時もある。
 娘は学校でクラスメートとのコミュニケーションはうまくやっていけてたのかな…。
 「ありんこ」のあだ名はあまり気に入ってないと言っていた娘の事がふとよぎった。

※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
#エッセイ #あだ名 #チャレン爺有村 #有村正

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