慕嬢詩『川』
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今朝は近頃になく激しい雨が降っている。 「ここの川、あふれてけーへんの?」 暗い空と窓を叩く雨音を聞くと、不安そうな娘の顔がしみじみと思い出される。 「川があふれたら家が水びたしになる」と心配顔。 「大丈夫やで。この川は近くの海に流れるからあふれる事はあれへんで」 自宅は市の西側に位置し、横の土居川は海に繋がっているので雨で増水する事はないが、潮の満ち引きで水位が変わる。 この川を感潮河川(かんちょうかせん)といい、海の潮の干満によって川の水が流れ、干潮に向かう時と満潮に向かう時で流れる向きが変わる。 54年前、私が堺に来て初めて住んだ店の寮の横も土居川で、昔は環濠都市として町の中心部の四方を川がぐるりと取り囲んでいた。 しかし昭和40年代以降に、この東の部分と北の部分は埋められて「環濠」も名ばかりとなり、現在はその上を高速道が走っている。 そう言えば、この家に引っ越す前で娘が生まれた家の近くには大和川があった。よく乳母車を押して堤防や河川敷を散歩したものだ。 さらに私が生まれた実家の歩いて1分の所にも城東運河があり、帰省の時、娘の手を取りこの川に架かる橋を渡って神社にお参りした。 よくよく考えてみると私も娘も二人の生涯の風景には、川で始まり川で終わりを迎えている。 ※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。 #慕嬢詩 #川 #チャレン爺有村 #有村正 |
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