慕嬢詩 『シベリア・ユリ』

 先日、ショッピングセンター内の花屋の店先で、真っ白で大きな花が目に留まった。
 これはカサブランカで、華やかかつ気品があり純白の大輪の花をつけ、「ユリの女王」と言われている。
 カサブランカで思い出したのは、友人から贈られたフラワー・アレンジメントを店に飾っていた16年前。
 見事な咲きっぷりにお客さんは「さすが、カサブランカは豪華で素敵な花」だと喜んだ。
 しかし、居合わせた女性客が「これはシベリア・ユリよ」と異論を唱えた。
 カサブランカかシベリア・ユリか、論じ合った挙句、ネットで調べることに。
 「シベリア・ユリはカサブランカより少し小さく、茎は太くて固く、蕾は上向きで咲く」とある。
 従ってそれはシベリア・ユリだった。
 次に問題になったのがシベリア・ユリの赤っぽい雄しべの処理。取るか取らないかで物議をかもした。
 女性客は「白い花びらを汚す」とか「服についたら取れない」から取ると云う。
 男性客は「白い花びらと赤い雄しべのコントラストがええねん。取ったら見た目の美しさが損なわれる」と反論。
 後でたまたま店に遊びに来た3人連れの花屋の女店員は、「私の店ではめしべを取ってから出荷する」と云った。
 どちらにも言い分があるので、私は「写真を取ってから雄しべを取るわ」とその場を収めた。
 このシベリア・ユリの話は、8月1日の娘の3回忌に贈られた時のこと。


※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
#慕嬢詩 #冬の夜 #チャレン爺有村 #有村正


●back

●hitomi-top

●next

MYホームページ 愛netコミュニティ