慕嬢詩 『夕餉(ゆうげ)の食卓』

 「うわぁ、今日は大好きなハンバーグや!」 
 いい匂いが立ち込める、夕餉の食卓に娘の声が弾む
 ジュワッと出る肉汁、ホロッと崩れるやわらかさ
 ニコニコしながら、挽き肉のおまんじゅうをほおばって
 夕方まで遊んで、スッカラカンのお腹を満たして満足げ
 娘はしっとり柔らかくて、ジューシーな鶏の唐揚げも大好き
 パクパクムシャムシャ、あっという間に平らげて
 学校であったこと、友達と遊んだこと、お喋りが弾む
 私は晩酌のつまみに合う、ニンニクが効いた特製のから揚げ
 お酒がすすむ、スパイシーでジャンクな味わいを愉しんだ
 娘は小さい頃、偏食で嫌いなものは口にしなかった
 それが、保育園の給食のお陰で、食べられるものが増えた
 妻は私たちの喜ぶ顔を想像しながら、夕餉の支度に腕をふるう
 家族で囲む食卓は、笑い声と喜びにあふれていた
 あれから数十年、年寄り夫婦の夕餉の食卓はたそがれて
 これといった会話もなく、テレビを見ながら黙々ともぐもぐ
 時々、娘がいた頃を懐かしみながら、料理をつまんで口に運ぶ

※夕餉(ゆうげ)=夕方の食事。夕食。夕飯。
※ジャンクフード=栄養価のバランスを著しく欠いた調理済み食品のこと。
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※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。



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