慕嬢詩 『海遊館』

 一昨日から大型連休が始まった。コロナ禍の感染防止の為の緊急事態宣言も蔓延防止等重点処置も無い、制限無しのゴールデンウィークは3年ぶりだ。
 世間には自粛生活から解放され、楽しみを求める人々があふれるが、子供も孫もいない私たち年寄り夫婦には無縁である。
 娘が小さい頃は、親の務めとしてゴールデンウィークは仕事の合間を縫って何処かに連れて行った。その中で特に印象に残っているのが海遊館。
 他の水族館と違って長いエスカレーターで最上階まで登り、そこから順路に従い、らせん状にスロープを降りながら各水槽をめぐるシステム。
 7階のアザラシやアシカは動物園よりも間近で見られて迫力満点。突然大きな声で鳴いたり、水中に入って暴れまわるかの様に泳ぐので視線が釘づけに。
 たまたまペンギンのお食事タイムに遭遇。ペンギンたちがエサを求めて飼育員の元に集まる様子が保母さんとたわむれる園児と重なり愛らしかった。
 イルカが元気に泳いでいたり、別の水槽ではサンゴと色鮮やかな魚たちのコントラストが楽しめたりと、水槽ごとに色々な楽しみがあった。
 一番の見どころの、水で出来たビルの様な巨大な「太平洋」水槽の周りを、らせん状に下りながら鑑賞するので様々な角度で海の生き物たちに出会える。
 そこには同館の目玉の一つ、世界最大級の魚類のジンベエザメが悠々と泳ぎ、餌を求めてガバッと大きく口を開く姿はダイナミックで風格たっぷり。
 複数のエイも数多く泳いでいて、その泳ぎ方は三角形をしたヒレを、あたかも鳥の羽根の様にゆっくりと上下させながらバランスよく遊泳していた。
 あまりのエレガントさに、水中ではなく空中ではないかとの錯覚を感じるほど。この巨大な水槽は、時間を忘れて眺め続けたくなる。
 最下部まで降りて行くと、睡眠タイムに入っている魚たちが難破船の様に、動く事なく底でじっとしている様子が伺えて海の底にいる感じになった。
 初めて訪れたスケールの大きな水族館に、娘は驚きと共にキラキラ目を輝かせて水槽を覗いてた。
 ゴールデンウィークで、あの時の娘の姿が目に浮かんだ。
#慕嬢詩 #海遊館 #チャレン爺有村 #有村正
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。



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