慕嬢詩 『ベビーカー』

 徐々に厳しい寒さも和らぎ、春の陽気が感じられる2月末のいつもの遊歩道。
 後ろ方からツインベビーカーを押した若い二人が小さな子を連れて近づいて来た。
 この日は日曜日なので旦那さんも一緒に家族で散歩に来たのだと妻と話した。
 穏やかな日差しの中、双子の赤ちゃんと小さな女の子と若夫婦、なかなか微笑ましい光景である。
 一人でも育てるのが大変と言われる昨今に3人の子育て、すれ違いざま心の中で「頑張って!」とエールを送った。
 ベビーカーと言えば四十数年前、私がある市場内で喫茶食堂を始めた頃、店の片隅に生後4カ月の娘をベビーカーに乗せてはたらいていた。
 常連客は「可愛いね」とあやしてくれたり、幼稚園や学校がひけた市場の商売人の子供達が店の前の広場へベビーカーを連れ出して遊んでくれた。
 たまの休日に、近所の小路(コウジ)や公園をベビーカーを押して散策していた時、娘はきょろきょろと楽しそうに周囲を眺めていた。
 時々「何歳ですか」「今が一番いい時ね」「孫も同じくらいです」「頑張って下さい」と通りすがりの人に声をかけらる事もあった。
 新しい商売や生活・育児などの将来に不安があったが、その言葉にほっこりして心に穏やかな風が吹き、明日への新たな意欲をかきたてられた事があった。
#慕嬢詩 #ベビーカー #チャレン爺有村 #有村正



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