hitomi's poem
hitomiの詩 part93 思い出の喫茶店

散歩途中の息抜きに、ふと脳裏に浮かんだ都会のオアシス。
数年ぶりに訪れた喫茶店、休みなのかシャッターが閉まっていた。
気になり翌日に訪れるも、閉店したのか、またもシャッターが。
店前(タナサキ)の並木道の、裸木(ハダカギ)の枝が淋しそうに垂れていた。
おしゃれなカフェや、大手チェーンの店に押され、
市内の老舗喫茶店が、次々と姿を消してゆく。
街とは移り変わるもの、物事には終りがあるものと、
分かっていても、思い入れのある店の消滅はやるせない。
この店は娘が高校生の時、1年間近くお世話になった喫茶店。
初めて得たバイト代を手にした時の、喜んだ顔が懐かしい。
数年前まで時々訪れた、ゆったりと落ち着ける琥珀色の空間。
年月を重ねた、情緒溢れるあめ色のテーブルが並び、
濃いえんじ色の椅子に、シックな板張りの壁。
ほの暗い照明に渋いジャズが流れる、落ち着いた雰囲気の中、
コクと香りを楽しみ、本を読みながらゆっくりと過ごしたものだ。
日頃の喧騒(ケンソウ)を忘れさせてくれた、思い出の喫茶店、
昭和の名残がまた一つ消え、時の流れを痛感した。

※裸木=冬になって落葉を終えた樹木のこと。
※喧騒=物音や人の声がうるさく騒がしいこと。




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