hitomi's poem

hitomiの part38(紫陽花)



あれは何年前だったのかは定かではない
だけど、娘の瞳がまだ幼かったのは確かだ
梅雨空のシトシトと雨が降り続く季節だった
家の横の小さな花壇に紫陽花が咲いていた
緑の葉に雨粒を溜めながら活き活きと咲いていた
その小ぶりな一輪を摘んで家のテーブルに飾った事があった
瞳は薄紫色のふんわりとした可憐な手毬をつくづく眺めていた
「このお花、きれいね」
フランスでは“愛情”の花言葉をもつ紫陽花は六月の花嫁に似合うブーケ
「瞳がお嫁さんになったら、この花束をやるよ」
「うん、大きくなったらパパのお嫁さんになるよ」
あどけなく微笑んで言ったのを覚えている
あれからかなりの歳月が経過した
時は移ろい、瞳は今はいない。数年前に涙の別れをした
季節は流れ、庭の紫陽花は今はない。誰かが株ごと摘んだみたいだ
千変万化に彩りが変化する紫陽花のように、私の環境も随分と変化した
梅雨空のシトシトと降る雨音を聞くと遠い昔を思い出す
あれは何年前だったのかは定かではないが…
※慕嬢詩(ボジョウシ)=娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。

一句:父と娘(コ)の 想いを馳せる 紫陽花に


戻る




●back

●hitomi-top

●next

MYホームページ 愛netコミュニティ