(ひとみ)

エッセイ:essay
(cici)
hitomiとの思い出話を送って下さい
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誰やろな? (17/8/15)
 娘の友達・R子ちゃんから「瞳ちゃんのお墓参りしてからお宅に伺います」との電話があったので、彼女に手ぶらで来る様に言った。
 そして私は先回りしてお墓に花をお供えしようと瞳が眠っているお寺へ行ったが、お墓に着くと既に新しい花が供えられていた。
 「誰やろな?さっきのR子ちゃんには墓花(ハカバナ)を買わない様に言ってるし、時間的に来れるはずがないし…」
 「以前にも何回か誰かが花を供えてくれたことがあったが、身内に聞いたら違うと言うてたし…」
 「誰やろな?」とあれこれ考えながら帰路についた。
 帰宅後しばらくしてから、墓参りを終えたR子ちゃんが瞳の仏前にも手を合わせに来宅したので墓花の事を聞いたが、やはり彼女も違った。
 一度だけお墓に花を供えた人が後で分かった事があったが、それ以外はいつも妻と心当たりを推測をするが全く見当がつかない。
 墓花の主に会ってお礼を言いたいのだが、毎回「誰やろな?」と解明に思いを巡らせている。
 どなただか分かりませんが、この場を借りてお礼を申し上げます。
 「本当にありがとうございます。夫婦共々感謝しております」
カシス・ソーダ (17/7/1)
 当店のドリンク・メニューには数十種のカクテルがある。
 お客さんが飲むのはほとんどビールかチューハイだが、時々カシス・ソーダのオーダーがある。
 オーダーするのはだいたい若い女性だ。
 今夜も当店では数少ない若いカップルが来店し、20代の彼女がカシス・ソーダをオーダーした。
 グラスの底にカシスが溜まり上部は透明なソーダが浮き、そのグラデーションが美しい。
 マドラーで混ぜてしまうのは勿体ないが、軽くステアして出した。
 彼女は喉が渇いていたのか、美味しそうに一杯目を早々と飲み干した。
 ソーダ系は爽やかで、夏の暑い日に飲むと一段と美味しく感じる。
 「お代わりしましょうか」
 彼女はカラになったグラスを差し出して、二杯目もカシス・ソーダをオーダーした。
 BGMに演歌が流れ、昭和を漂わせるスナック・バーの薄暗いカウンターに不似合いな若い男女。
 彼氏は紫色の煙をくゆらせながらバーボンの水割りを飲み、彼女はカシス・ソーダを口元に運んだ。
 氷が入ったグラスの中身は、時間の経過と共に薄くなっているはずだが、彼女は味わい深く飲んでいる。 
 カシス・ソーダはメニューにあり何度も作っているが、私は今まで飲んだことがなかった。
 「どんな味?」
 興味がわいて、自分用に作ってひとくち口に含んだ。
 「ん、甘くて美味い!」
 ソーダのさっぱり感がマッチしたフルーティな味わいだ。これなら若い女の子が好むのもうなずける。
 カシス・ソーダのカクテル言葉は『貴方は魅力的』
 カシスの深い紅色がミステリアスなイメージを連想させ、その言葉を当てはめたのだろうか。
 もし瞳が生きていたなら、私が心を込めて作ったカシス・ソーダを飲ませてあげたい。
 ※ステア=グラスに直接材料を注いでつくる際にマドラーなどで軽くかき混ぜること。
散歩 (17/5/15)
 心地よいポカポカ陽気に誘われて、久しぶりに運動がてらに近場を散歩した。
 5月のみずみずしい光と柔らかな風が、年老いた私に活力を与えてくれる。
 さわやかな花と緑につつまれた公園には、小さな子供たちが母親に見守られて遊んでいた。
 そういえば、瞳がよちよち歩きをしだした頃、時々近くの公園に連れて行き散歩をしたものだ。
 道端には黄色い花が咲いていて、立ち止まっては指をさして興味を示した。
 散歩中の子犬を見つけると、にっこり笑って近づいていき手を差し伸べた。
 ポッポッポと鳴きながらエサをついばむ鳩を見て、触ろうと追いかけたこともあった。
 子供たちがボール遊びをしていると、ボールが転がる方向に目を奪われてはキャッキャッとはしゃいだ。
 好奇心旺盛な瞳は私の手を引っ張って、興味のある方へ進み、気が向く方へどんどん歩いた。
 それまで知らなかったあらゆることを、散歩をしながら吸収していた。
 あの時の瞳との散歩は、毎日の慌ただしさで見失いがちな我が子への愛しさ、共に過ごせる時間の尊さを改めて気づかせてくれた。
 あの時の散歩での、瞳の可愛いむっくりとした手のぬくもりが、今でも私をほっこりとさせてくれる。
ゴールデン・ウィーク (17/5/1)
 五月晴れの青空に、鯉のぼりが風をはらんで飄々(ひょうひょう)と空中遊泳をしている。
 緑の若葉に覆われた公園の木々は、風にゆすられて陽気に(うた)っている。
 人々はゴールデンウィークに入り、様々なプランに胸を(おど)らせている。
 多いところでは9連休(れんきゅう)もあり、海外旅行に行く人もいるだろう。
 友達同士や恋人同士の、ちょっとした小旅行(しょうりょこう)とか日帰り旅行も。
 この時期は家庭サービスでテーマ・パークや遊園地は満員(まんいん)だろうな。
 インドア派は録り()めた番組や見たかったDVDを一気に観賞したり読書をしたり…。
 そんなこんなでゴールデン・ウィークで、世間は楽しみに()ちている。
 しかし、そんなゴールデン・ウィークも(ひとみ)には楽しい思い出はなかった。
 (ひとみ)が生まれた頃から私は独立開業をしたので、盆と正月と日曜日以外は休んだ事がなかったからだ。
 友達から両親にあちこち連れて行ってもらった話を聞かされて、きっと寂しい思いをしたに(ちが)いない。
 その頃は仕事に必死だったので気が付かなかったが、今になって(ひとみ)の気持ちを思うと辛くなってくる。
 (ひとみ)がこの世に居なくなってからあれこれ考えても、今さら為すすべがない。
 悔いて始まるわけではないが毎年この時期になると、その事が脳裏(のうり)に去来して胸を締め付ける。
 生き方が不器用な私は、ゴールデン・ウィークに浮かれる事なく、年老いた今でも哀しみを背負いながら黙々(もくもく)と働いている。
リカバリー (17/1/15)
 昨年、ピコ太郎というタレントがPPAPをYouTubeに配信して世界的に大ヒットさせて夢を叶えた。
 それに影響を受け、今年の抱負として店のお客さんの歌唱を新設したホームページ『タイガー音楽館』にまとめてYouTubeに配信する事にした。
 年賀状でそれを宣言したものの、簡単に考えていたこの作業が結構手間がかかる。
 まず録画である。HDDの容量もあるので営業時間中全てを録画する訳にはいかない。
 これと思う歌唱だけを選り分けて、その曲名をメモしながら録画をするのだが、忙しい時は録画のボタンを押したままになる時もある。
 次に録画した映像をDVDにダビングしてPCのムービーメーカーで編集しようと試みるも信号が合わず断念。
 それならばとビデオカメラに録画映像を収録してムービーメーカーで編集する事にした。
 これがまた、大変で5時間録画すればその時間の全ての映像のチェックをしなければならない。
 良いと思った映像が、唄い出しが入っていなかったり、リズムが外れたり、声が小さかったり、雑音が入っていたりしているからだ。
 チェックしたビデオカメラ映像をPCに取り込んでムービーメーカーで編集してYoutubeに配信。
 それを、ホームページ『タイガー音楽館』にまとめてインターネットで公開しようとしたが、サーバーが不通でアップロード出来ない。
 お正月休みでレンタルサーバーの会社が休みで対処ができない。
 それならばとネットで別の会社を探して乗り換えたが、ドメインのcomを維持するには元の会社と解約手続きをしなくてはならない。
 正月休み明けを待って連絡するもレンタル料3月分迄を振り込まないと解約できないとの事。
 翌日からは3連休で10日に解約出来たがドメインの移転は素人では難しいので乗り換え先のレンタル会社でしてもらう様にと言われた。
 それを移転先のレンタル会社に伝えると当社では出来ないので、指示通りに操作して下さいと言われなんとか設定をして電話を切った。
 そしていざインターネットで当店のホームページにアクセスすると『指定されたページまたはファイルは存在しません』の画面が。
 次の日に移転先の会社に電話すると「最終的に当社のコントロールパネルから2、3か所を変更して下さい」との事。
 因みにこういう会社は電話をしても直ぐには繋がらない。酷い時は3時間半も待たされた事があったので1日に1回しか出来ない。
 そして、ようやくホームページが更新出来たのは1月13日。まだまだ編集すべきお客さんの録画した歌唱は残っているものの何とか恰好がついた。
 それやこれやで精神的に疲れ果てて、Hitomiのホームページのネタが思いつかない。15日が更新日なのに全く浮かんでこない。
 これまで(ひとみ)に関するネタで約310もの詩やエッセイを書いてきたので新しいネタを探すのは限界にきている。
 それに加えて『タイガー音楽館』の作業が増えたので、今まで守ってきた月2回の更新をやめようかと思った。
 しかし月に2回、Hitomiのホームページを見に来ている人もいるので、なんとかペースを守りたい。
 迷った末に今回はこの経験をネタにしてホームページを更新、日にちはズレたもののなんとか月2回のペースに復旧する事が出来た。




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