hitomi's poetry
想い出綴り−59 待合室 

cici

日に日に暖かくなって草木が芽を吹き、清々しい青空が空一面に広がる。
人一倍寒がりの私には待望の春の到来だが、また辛い季節でもある。
それは毎年、3月になると持病の花粉症に悩まされ病院通いが始まるから。
評判がいいのか、私が行く耳鼻科の待合室は風邪と花粉症の患者でいつも満員である。
空いているベンチがない時は、私は立ちながら何気に辺りを見回したりして診察時間を待つ。
午前中は、年輩の人々や主婦らしき人、それに子連れの女性が多く見受けられる。
幼子が母親の手を離れて、この後にどんな怖い目にあうか知らないでチョロチョロと動き回り、
見知らぬ人に愛嬌を振りまいて待合室の人達を和ませている。
そして診察室では大声で泣き叫び、診察が終わり精算を済ませる頃には何事も無かった様に
元の愛くるしい子の戻っていた。
「瞳もこんな時があったなあ」
母親に寄り添っている小学校の制服姿の子供は学校を休んで来たのだろう。
「この制服は瞳と同じ学校やな」
風邪をひいて鼻水が酷かった瞳を、学校を休ませて治療に来たことがあった。
夜のベッドの中では、鼻づまりで息がしづらくなり、とても苦しそうにしていたのが脳裏に浮かぶ。
近所の内科医のこの時間帯の待ち合い室は、お年寄りばかりで井戸端会議の場になっているが、
耳鼻科の待合室は、私にとって幼い頃の瞳を思い起こす場所である。






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