酒は神代の昔から
酒は、白米を原料とした醸造酒である。
酒を造る事を「醸すかもす」というが、これは「噛む」が語源といわ
れ、原始的には、食料を噛んで、それを吐き出し、それを一定
期間貯えて造ったのである。唾液の中の酵素の働きによるも
のだ。
日本でも古代は、そうして造っていたが、奈良時代になってか
ら、麹こうじを用いて発酵させる方法が生まれた(中国から伝来
した方法による)。その頃、ブドウ酒も造られる様になったとか。
酒は一般に燗をして飲むが、その燗について一言。
酒の燗は、“人肌が良い”といわれる。すなわち摂氏36度〜40
度ぐらいというところか。それ以下を「ぬる燗」、それ以上を「熱
燗」と呼ぶが、冷酒党も多いようだ。ただ「親の意見と冷や酒は
あとから利く」というように、ジワジワとゆっくり利いてくるから、
酒に馴れない人は、冷酒をガブガブ飲まない事が肝要です。 |
甘口と辛口
日本酒に凝った店では酒の一覧表なるものがあって、有名な
酒の銘柄がズラリと並んでいて、それも生産地と甘口・辛口別
が記載されている。それも「大甘」「甘口」「やや辛」「辛口」と
いった具合に微妙に分類されいる。
最も最近の日本酒は、全体的にいって、甘くなってしまったと
いう説が一般的だから「大甘=超甘」「甘口=大甘」「やや辛
=普通かやや甘」といった具合に翻訳して読む事も必要だろ
うが、一応の目安にはなる。
外国人から見ると日本の飲んベエは銘柄に関心を持たないら
しい。「お酒は燗に限る」「いや、冷やの方がずっとうまいよ」と
いうクセに、飲み屋さんに入ったとたんに「冷たいビール大至
急」「一級酒、熱燗1本」と、これまた大雑把な飲み方である。
甘口と辛口とは醸造法の違いによって生まれる。甘口はエキ
ス分の多い酒で、辛口はエキス分の少ない酒。自分の好きな
銘柄を決めよう。 |
酒の銘柄・珍名あれこれ
地酒、焼酎の銘柄には、産地ならではのものが沢山あります。
人物あやかり編:お札の発行にともなってつけられた、「諭吉
の里」「学問のススメ」(大分)、「稲造の里」(青森)、「道後坊
ちゃん」(愛媛)。長寿世界一といわれた泉重千代さんが住ん
でいた鹿児島の奄美には「重千代」(ラベルに泉重千代さんの
写真付き)。東郷平八郎元帥命名の「トップ水雷」(鳥取)。
小説・テレビあやかり編:「吉里吉里酒」(岩手・井上ひさし『吉
里吉里人』から)、「水戸黄門」「助さん格さん」(茨城)
中年向け:「お父さんありがとう」(滋賀)、「社長の酒」(群馬、
埼玉)、「旦那様の酒」(埼玉)、「がんばれ父ちゃん」(山梨)
番外編:「北緯45度31分」(北海道・酒造所の位置から)、「女
なかせ」(静岡)、「のもうや」「夜の帝王」「年増美人」(広島)、
「寿喜すき娘」(福井)、「成金娘」「酒豪」(兵庫)、「美味求心」
(埼玉)、「腰古井こしふるい」(千葉)、「新婚」(岡山)、「スキー」
(新潟)、「貴運久キング」(大分)、「コアラ」(岐阜)。
お正月向け編:「初日の出」(京都)、「初詣」(三重)、「初笑」
(兵庫)、「寿」(愛媛)、「初夢桜」(愛知)、「よろこびの酒・お
めでとう」(和歌山)、「門出笑顔」(秋田)、「富久迎ふくむかえ」
(岡山)。 |
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「狂米」と書いて、何と読むか?
酒には古来様々な呼び方がある。古くは、久志くし。これを縮
めると「キ」といういい方になる。今でも、神酒、御酒と書いて、
「ミキ」と読むのはこの為である。
これ以外にも酒の呼び方は千差万別。なぜ、その様な呼び方
になるのかいっこうに見当のつかない。異名もあるが、よくよく
字面を見ていると、なんとなく酒の本質、酒の席がかもしだす
情緒を的確にとらえている様で面白い。次に、一例を挙げてお
く。ただし、これは日本酒だけとは限っていないので念の為。
狂米きょうべい、般若湯はんにゃとう、九献くこん、大神酒おおみき、豊神酒
とよみき、白酒しろき、黒酒くろき、三国一さんごくいち、玄水げんすい、一夜
酒ひとよざけ、硯水けんすい、間水けんすい、聖ひじり、聖人せいじん、霞かすみ、
賢人けんじん、紅面くめん、久志能加美久志くしのかみくし、濁賢だくけん、
白玉はくぎょく、金波きんぱ、真一しんいつ、白堕はくだ、玉友ぎょくゆう、客談
きゃくだん、軟口湯なんこうとう、美禄びろく、百薬長ひゃくやくのちょう…。 |
日本酒と“米”の関係
現在市販されている日本酒は原材料の表示から次の3つに分
けられます。
@米・米麹(こめこうじ)
A米・米麹・醸造用アルコール
B米・米麹・醸造用アルコール・醸造用糖類
このいずれかが、ビンのラベルや箱酒のどこかに表示されてい
ます。日本酒は元来「米」から造られていて、ほとんどの人が
そう信じております。
しかし、現在市販されている日本酒のほとんどが、AとBに属し、
@で造られている本来の日本酒「純米酒」は日本酒全製成量の
2%にも満たない少量です。
Aは米・米麹意外にアルコールを添加している酒で、ここに属す
る酒は添加アルコールの非常に少ないものから、酢税法で許さ
れる限度一杯(白米1t当たり280g)のアルコールを加えたもの
まで色々あります。
この添加量の多少を見極めるラベル上の表示に、“原材料の表
示”の他に「本醸造」「本造り」があります。この二つの表示が許
されているのは、アルコール添加量が白米1t当たり120g以下
のものに限られています。また、「特別本醸造」という表示のあ
るものは、添加するアルコールが米を原料とした場合です。
Bのグループに属する酒は清酒の仕込み時に、ブドウ糖や水飴
などの醸造用糖類使用の「三倍増醸清酒」です。
原材料表示の中に醸造用糖類という文字があることは、その清
酒の中に清酒風味アルコールがブレンドされている証拠です。
主に大量生産と原価引き下げを目的に使われているもので、本
来の清酒の本質から少しはずれています。
しかし、純米酒は「米ばかりなので味が重い」とか、「純度の高
いアルコールを加えた方が味が軽快で飲みやすい」との意見も
あり、Bを製造している大手メーカーもある。 |
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