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久しぶりに娘の夢を見た。六歳ほどの姿で、妻と三人で万博に来ていた。多くのパビリオンは長蛇の列で入れず、私たちは予約不要のパビリオンをぶらぶらと回っていた。場内は混雑しており、はぐれぬよう注意していたのだが、いつのまにか娘の姿が消えていた。
私はなぜかリングの上に立ち、場内を見渡して探した。いた、いた。光の広場にあるカラフルな遊具に滑り台やシーソー、回転遊具などの遊び場で、娘は夢中になって遊んでいた。
「ひとみ~、そこにいときや~!」と声をかけ、急いで駆け寄った。ところが今度は妻がいない。つい先ほどまで一緒だったのに、慌てて娘の所へ行ったばかりに妻のことをすっかり忘れていたのだ。
「あ、携帯で連絡しよ!」と思ったが、持ってくるのを忘れていた。連絡が取れない。不安げに歩く妻の姿が目に浮かぶ。方向音痴の彼女はきっと心細さに駆られ、怒っているに違いない──そう思った瞬間、不機嫌な妻の顔がクローズアップしたところで目が覚めた。
万博には一度行ってみたかった。当初はスマホでの手続きが複雑で、経験者に聞こうとしたが、身近に万博に行った人はいなかった。七月になってようやく教えてくれる人に出会ったものの、その頃は連日の猛暑。涼しくなってからにしようと先延ばしにした。
だが九月半ば、ようやく秋風が吹き始めたころには、駆け込み需要で予約が取れなくなってしまっていた。
生きているうちに、もう二度と開催されることのない万博。行けなかった心残りの大きさが、あの夢を見せたのかもしれない。そこに愛しい娘までも登場したのは、きっと私の深い思いのあらわれなのだろう。
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※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
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