慕嬢詩 『あの人が…』

 この前の日曜日に妻と二人で娘の墓参りに行った。
 私たちはお参りする日がまちまちで前回の墓花が枯れているか、お寺の人が片付けて無い時もあるが、左隣の墓の墓花はいつも真新しい。
 それが、今回は墓花が無い。「こんなの初めてよネ」「珍しいなあ。なんでやろなア」と二人で顔を見合わせた。
 お隣さんはお母さんと息子さんが2週に1度、亡きお父さんのお参りをされていて、たまたま顔を合わせた時はお母さんと言葉を交わしていた。
 そして妻が隣の墓石に刻まれている戒名、没年月日、俗名、亡くなった年齢を見つけた。それを見てお母さんが8月に亡くなったのを知った。
 妻 「へえ、お母さん、8月に亡くなってたんや」
 私 「前に遇(オ)うた時は元気やったのにな」
 妻 「コロナかなあ?」
 私 「時期が時期だけに、それも考えられるなあ」
 妻 「お母さんは泉北(堺)で息子さんは神戸で、いつもお母さんを送り迎えしてたのにネ」
 私 「お母さんが亡くなり、息子さんはたびたび墓参りに来られへんようになったのでは?」
 妻 「それで墓花が無いんやネ」
 私 「お母さん、遇(オ)うた時はいつも快く受け答えしてくれたのにな」
 妻 「まだ若かったのに、あの人が…」
 私 「瞳も若死にしたから後で死を知った人は、あの人が…と言うやろね」
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。
#慕嬢詩 #あの人が… #チャレン爺有村 #有村正


●back

●hitomi-top

●next

MYホームページ 愛netコミュニティ