エッセイ:essay
(cici)
hitomiとの思い出話を送って下さい
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福娘  (13/1/15)
 毎年1月10日頃には、店の恒例行事で近くの商売の神様が祀られている堺戎神社にお参りに行く。
 今年も「商売繁盛で笹持ってこい」のかけ声に誘われるように『えべっさん』に行き、昨年の福ザルを
返納した後に身の引き締まる思いで本殿に参拝した。
 その後、新しい福ザルを買って可愛い福娘さんに米俵や鯛や小判などを模した縁起物を数個を飾り
付けてもらった。
 お参りした時間帯が悪いのか参道の露店の売り子たちは寒そうにしながらヒマを持て余していた。
えべっさんで儲かっているのは神社では?と思いながら通り過ごす。
 帰宅後 、店の玄関口の上部に福ザルを飾り付けて商売繁盛を祈願したが、結果的には気休めだけ
で御利益を授かったと感じたことはない。
 それよりも時々瞳の友達や同級生が来店して、その若さで当店の高い平均年齢を下げてくれ、活気
づけてくれている。
 当店の福娘は瞳だ。
瞳の花嫁姿 12/11/1

 昔は趣味で似顔絵を描いていたが8年前に瞳が死去してから
心身ともに弱り果て、何をするのにも気力がわかなくなり似顔絵
もピタリと停止した。
 その3年後、『NHKのど自慢』のチャンピオン大会に出た時に横
断幕用に瞳の似顔絵を描いたが、その時だけでそれ以後も描け
なかった。
 今回、あるテレビ番組の企画の“たいせつな家族の似顔絵を
大募集”を見て、「また瞳の似顔絵を描いてみたい!」との衝動
に駆られた。
 今はこの世にはいない瞳だが時々私の目の前に現れる。夢の
中に現れる。何かの拍子にも現れる。よそ様の結婚式を見た時
にも瞳の花嫁姿が脳裏に現れる。
 そこで、生前に瞳の花嫁姿を見ることができなかったので、一
度は見たかった瞳の花嫁姿を描くことにした。
 花嫁を送る父親の気持ちになって真っ白な紙に想いをこめ鉛
筆を走らせていると、父と娘の二人だけの結婚披露宴のシーン
が目に浮かんだ。
 そして、「お父さん、お母さん、いつまでも私を見守ってくれて、
ありがとう」と花嫁の“両親への手紙”の一節が耳に聞こえた。
3000mリレー 12/9/1
 先月29日にMBS『ちちんぷいぷい』放送3000回記念の“情熱関西リレー3000m走り隊”に出場した。
 募集要項が「この夏、どーしても走りたい理由がある人」だった。8月は瞳の祥月で「お父さんは頑張ってるで!」と
天国の娘に伝えようと応募した。
 意気込みは良かったのだが、64歳で陸上部の経験が無い上に40年以上走った事が無い私は自主練の当初、10m
ぐらいのランニングで音を上げた。それでも後には引けぬと両脚の筋肉痛、腰痛と闘いながら30m、50m、70mと徐々
に距離を伸ばしオーディションでは100m19.44秒のタイムを記録した。
 これでは他のリレー参加者に迷惑をかけるとタイムアップの為に無理をしたのが災いして両足のアキレス腱を痛め
た。その後、本番までの10日間はランニング練習が出来ず、病院で痛み止めの薬をもらい注射も打って万全を尽くし
て本番に臨んだ。
 それでもアキレス腱炎は完治とはいかず不安を抱えたまま走ったら、今度は左ふくらはぎの肉離れを起こしてしま
い、激痛を堪えながらなんとか100mを走り切った。
 重なる肉体のアクシデントで散々な思いもしたが、若い仲間と一丸となって目標に向かって頑張れた事や、元日本
記録保持者・井上悟監督とリーダー・山中真アナウンサーの下で元オリンピック・マラソン銀メダリストのE・ワイナイナ
選手や元阪神タイガースの遠山奬志投手と、大阪が世界に誇る長居陸上競技場で走れた事は大きな喜びと共に一
生の思い出になった。
 天国の瞳もきっと一緒に喜んでくれただろう。
 ※祥月(しょうつき)=一周忌以後において、故人の死去した月と同じ月。
ランニング 12/8/15
 最近、あるテレビ番組の企画で十数人の人たちとリレーで走る事になったので、自宅からそんなに遠くない大浜公園
に行って体力作りをしている。
 真夏なのでランニングをするのは大体仕事が終わってから涼しいうちの朝方だが、仕事でかなり疲れた時は昼間に
行く。
 昼にランニングをすると公園内のプールから子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。横眼で声の方を見やると健康的
な子供たちが楽しそうに泳いだり水遊びをしたりしている。
 瞳が子供の頃、夏になると時々ここのプールに連れて来た。幼児用のプールから児童用プール、そして25mプール
へとレベルアップをして徐々に泳げる様になるのを喜んだものだ。紺色の水着に日に焼けた小麦色の瞳が今でも脳裏
に鮮明に残っている。
 約47年ぶりに猛暑の中で筋肉痛と腰痛をこらえながらのランニングは年寄りの私にはキツクて苦しい。それでもリレ
ーで他の人に迷惑をかける訳にはいかないので必死になって頑張るが、少し弱音を吐きそうになった時に「お父さん、
頑張って!」の天の声が聞こえて来た。



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