エッセイ:essay
(cici)
hitomiとの思い出話を送って下さい
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還暦祝い 08/6/1
私は今年、還暦を迎えた。52万時間も生きて来た。その間、色々あったが、なんとか辿り着いた
という感じだ。
5月も中旬が過ぎた私の誕生日に妻と二人で自宅近くの純和風のレストランで還暦を祝った。
付出し、前菜、お造り、吸物、煮物、牛肉陶板焼き、天婦羅、酢の物…。次から次へと出てくる
板前が腕を振るった会席料理に舌鼓(シタツヅミ)。
しかし、満腹なのに何か物足りない。心が満たされない。そうか娘の瞳がいないから少し淋しい。
もし瞳が生きていたらお祝いをしてくれていただろう。センスの良い瞳の事、赤いちゃんちゃんこ
ではなく、きっと赤いバラ60本の花束をくれていただろう。
でも、いくら悔やんでも仕方がない。これからは天国の瞳が安心して私を見ていられるように、
余生を上手に生きていこうと思う。
約束の実現 08/5/1
4月も半ばを過ぎた葉桜の頃、娘の友達が来宅した。娘の瞳がこの世を去ってから4年近くなる
のに奈良から来てくれた。
彼の趣味はバイオリンで、月に1回ボランティアで老人ホームで演奏しているとか。なかなかの
好青年だ。
彼は仏壇に手を合わせた後、「瞳ちゃんが生前、バイオリンでクラシックを聞かせてと言ってた
から」と、娘の好きだった“JUPITER”を弾いてくれた。
“JUPITER”はグスターヴ・ホルストの『組曲惑星』の中の1曲。バイオリンの音色が荘厳かつ繊
細なメロディーを奏で、私達を宇宙の彼方へといざなう。
演奏を終えた彼は「これで瞳ちゃんとの約束を果たせました」と、そっと弓を下ろした。
私達はナマのバイオリンで思い入れのある“JUPITER”を目の前で聞かせてもらい感激した。
「年寄りにええ音楽を聞かせてくれて有難う。今日も老人ホームの慰問になったな」とギャグ?
で返礼した。
連続テレビ小説・瞳 08/4/15
この4月からNHKの連続テレビ小説で『瞳』が始まった。
私は時間の都合などで今まで連続ドラマを見る事はなかった。しかし、知り合いが3年連続で
『瞳』がNHKの全国ネットで放映される、楽しみにしていると言ったので気になって見た。
3年連続とは、初回が2年前に『NHKのど自慢堺大会』で私が娘の瞳が好きだった歌を唄って
チャンピオンに選ばれ、瞳について話たのを放映された事です。そしてそれが週間ステラにも
掲載された。
2回目は去年、NHKホールで『のど自慢チャンピオン大会』に私が出場したのを放映された事。
この時は自宅の瞳の遺影や会場での瞳の似顔絵が描かれた横断幕が紹介された。
そして今年の連続ドラマ『瞳』です。
直接私とは関係がないと思って見ていたが、主人公とは名前も漢字も同じ、ダンサーを志して
いるのも同じ、幼い頃に両親が離婚したのも同じで、瞳とダブってしまい面影を思い浮かべな
がら見た。
テレビで時々出てくる短い髪に赤い着物姿の3歳時の主人公の写真を見ると、瞳の同じ様な
写真が目に浮かぶ。主人公は地方から東京に移り住んだが、瞳もダンスの勉強で東京への
移住を考えていた。
テレビでのおばあさんの葬式の場面、私は瞳の葬式を思い出した。おじいさんが主人公のア
ルバムを見て回想するシーン、私も時々瞳のアルバムを見ていたのでオーバーラップした。
テレビで「ひとみ、ひとみ…」と名前が出るたびに、瞳が家に居てそうな気持ちになる。
主人公はダンスのきっかけを、独り寂しい思いをしている時にダンスと出会い寂しさを紛らわ
してくれるから始めたと言っていた。瞳も寂しかったのかもしれない。私は気づいてやれなか
ったのを悔やんだ。
そして悲しい場面でもないのに、時々涙があふれてくる。他の人には味わえない私にとって
は特別な番組として、毎回胸をつまらせながら見ている。
DJ 08/3/1
先日、テレビで『みゅーじん・中田ヤスタカ(capsule)』を見た。
普段なら私の興味の範疇(ハンチュウ)の外なので見ないのだが、彼がクラブのDJだと知ったの
で見た。
瞳がクラブDJに大いに興味を持っていたのと足繁くクラブに行っていたので、好奇心と喜び
を共有したいと思い見た。
彼はガラス張りのブースの中でターンテーブルやミキサーを巧みに操り、こしじまとしこのボ
ーカルに合わせ、
異様で不思議な音をクラブ内に響かせて大勢の観客を酔わせていた。
彼はクラブシーンで圧倒的な人気を誇っている。瞳も彼の事を知っているのかな?生きて
いたら話し合えたのに…。
どうして瞳がDJが好きだと知ったのか。
それは瞳が入院中、部屋を片付けに入った時だった。
最初に目に付いたのが建設現場の鋼鉄製パイプの足場で組んだ3段式のラックである。
一瞬、なんやコレ?と思ったが見慣れてくると「お、粋やないか。こういう使い方もあったん
か」と感心した。
その中段に2台の大きなターンテーブルがデーンと鎮座(チンザ)していた。
他にはミキサーやオーディオ・セットとスピーカー。そして、沢山のアナログ・レコードがあ
った。
これだけのセットを部屋に設(シツラ)える女の子は滅多にいない。余程、好きだったんだなと
その時に思った。
そして瞳は死去、遺品として手元に置いていたが、ただ置いておくだけでは立派なターンテ
ーブルが可哀想だと思うようになった。
私には使いこなせないので、ターンテーブルとレコードを瞳と同年代の従姉妹(イトコ)に後を
預けた。
時々、その従姉妹のDJプレイに合わせて、瞳も宇宙空間に神秘的なサウンドを響かせて
いるかも…。
※範疇=同じような性質のものが含まれる範囲。
ネズミ 08/1/15
元日の寝起きに初めて目にしたのが台所にいた小さなネズミ。
私は子(ネ)年ながらネズミが苦手なので一瞬ビックリした。目が覚めた。
そして「嫌やな」と思いながら、どう対処しようか脳裏を戸惑わせた。
相手も私を見て驚いてサッと流し台のすき間に逃げ去った。
今年の干支は子年である。すなわち私の当たり年である。
それが新年の初っ端にネズミに出くわすとは…。
家でネズミなんて十数年間も出た事ないのに何か因縁めいたものを感じた。
そして三日の初出勤の日に店にも小さなネズミが現われた。チョロチョロと。
「なんやねん、一体。今年はネズミに悩まされそうな年になりそうや」と不安になった。
その出来事を店のお客さんに話した。
年配の女性客は「亡くなった娘さんが『私は元気やで、お父さんも元気でな』
と伝えに姿を変えてこの世に現われたんやで」と教えてくれた。
そばで聞いていた別のお客さんも「俺もそう思た」と同じ考えを示した。
庭で季節外れの蝉を見たとか、墓参りの時に蝶々が舞い何かを感じたと言い、
それは故人が姿を変えて何かメッセージを伝えに来たものだと以前に聞いた事がある。
その時は迷信じみた話で信じ難く気に留めていなかったが、今は現実と微妙に符合する
ので納得した。
そういえばネズミ捕りを仕掛けているが引っかかってないし居てる気配も無い。
元日の家と初出勤の日に店に出たきりである。それ以来姿を見ない。何処かへ行ったみ
たいだ。
瞳の化身ならこのまま出てこないで欲しいと思った。殺生をしたくないから…
食べ過ぎやで〜 07/10/15
ヒトミは普通でも細いのにダイエット・フェチだった。
今にも折れそうな細い棒みたいな身体だった。
それでも「少し太ったわ」なんてことを言う。
私にしてみればもっと沢山食べて欲しいと思った。
ある日、ヒトミのマンションに行き冷蔵庫の中を覗いて見た。
冷凍のほうれん草とコンニャクのラーメンが山ほどあった。
たまに我が家に帰ってきた時も御飯は食べず、野菜ばかり食べていた。
栄養のバランスが悪い。だから顔色も悪い。健康面で心配だった。
ただ一つ好きな動物性たんぱく質は鶏肉だった。
だから時々、ケンタッキーフライドチキンに連れて行った事があった。
ヒトミの友達が「ダイエットの相談を一生懸命アドバイスくれてた」と言い、
そして『あんた食べ過ぎやで〜』って止めてくれたとか。
今は忠告をしてくれるヒトミがいないから太る一方だと話していた。
季節は食欲の秋、好き嫌いのない私は何でも美味しい。沢山食べる。
その上に私は腰痛の影響で思うように運動が出来ない。
明らかに食べ過ぎに運動不足だ。だから肥えてきた。お腹がポッコリ出てきた。
それ故に体重計と鏡を見るのがコワイ。(気になるから計っているが…)
天国から「食べ過ぎやで〜」とヒトミの忠告が聞こえてきそうだ。



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