私の机の上に瞳が小学校の工作の授業で作った木製の本立てがある。
馴れないノコで切ったカット面は少し波打っているが味わいがあっていい。
板の面に残った鉛筆で引いた墨付けの線に真剣さがうかがえる。
釘は行儀よく間隔をあけて並んでいてしっかりと打ち込んでいる。
小学生の女の子にしては、なかなか上手に仕上げている。
瞳にノコギリや金づちの使い方などを直接教えたわけではないが、私の影響が大いにあると思う。
私は日曜大工が好きで、若い頃は棚や本箱や下駄箱や椅子などを作ったり、ベランダに1畳半ほどの書斎を作ったりした。
その時にそばで見ていた幼い瞳はメジャーを持ったり、釘や道具を取ってくれたりと手伝ってくれた。
私が一生懸命に打ち込んでいる姿を見て、瞳は「どんなんが出来るのかなあ」と目を輝かせていたのを覚えている。
自分で言うのはおこがましいが器用な方で、私の血を受け継いでいるところがうれしい。
瞳は猫をとても可愛がっていたので、本立てには猫の写真を貼っている。
机の上の木製の本立ては、瞳を偲ぶ思い出のひとしなである。
そのペーパーで磨き上げた木の表面はなめらかで瞳の肌のようだ。
そして、その木のぬくもりが瞳を感じる。
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