退屈な夜も…


 普段の私は夜の8時から仕事、病院は夜の9時から消灯。生活のリズムが全く違うので入院当初は全然寝付けずに戸惑った。
 長時間ベッドの中は体の固い私は背中や腰が痛くなる。また同室の患者さんのイビキや咳が耳障りで余計に眠れない。読書灯で本を読んでいたら見回りの看護師さんに「電気を消して下さい」。
 仕方がなくスマホで間をつなぐもゲームをしないので間が持たない。ある程度時間を見計らってから廊下をうろついた。
 窮屈な病室を抜け出して一人ロビーの椅子に腰を掛けて広い窓の外を眺めた。ここは12階なので窓から見える夜景がとてもキレイだ。
 私は堺に来てずっと夜の仕事だったので、こんな高い所から夜景を見るのは初めてだ。
 病院は堺の中心から少し離れているが、様々な街明かりが光り輝いている。
 堺は田舎だと思っていたがちょっとした都会に発展したものだ。私が堺に来た51年前とは大違いだ。当たり前の話だが…。
 「この景色は東かな西かな~?」
 夜景では病院からの方角が特定できないが別の窓の外をよく見るとこんもりした黒い影がある。あれは仁徳天皇陵に違いない。
 天皇陵の前の大仙公園には昔はよく行った。妻とデートをしたり、娘が小学生の頃はバトミントンをしたりかけっこをしたりと遠い昔の笑い声が聞こえてきた。
 色々と想像を膨らませてロマンチックな夜景の中で退屈な夜を過ごした。

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