hitomi's poetry
想い出綴り−51 虹

cici
 妻と買い物ついでにドライブに出かけて30分ほど経過した頃、突然の雷雨に見舞われた。
 家を出る時に東の空が黒い雨雲に包まれていたので覚悟をしていたが、予想していた以
上にキツイ雨だ。
 フロントガラスに叩きつけるシャワーの様な雨、ワイパーがせわしく雨水を払う。
 窓の外は薄暗くなり視界がぼやけると、握るハンドルも不安になってくる。 
 「あんた、スピードを落としや。スリップしやすいから気ぃつけや」
 助手席から安全運転を促す妻の声に、私はアクセルを踏む足を少し緩める。
 しばらく降り続いた後に雲の切れ間から太陽が顔を出し、目の前がキラキラと明るくなった。
 先程までの雷雨が嘘の様に晴れて、フロントガラス越しに七色の虹が目に飛び込んだ。
 「オイ、見てみ、虹や」
 「キレイやね。虹を見たのは、いつ以来やろね」
 「ホンマ、分からんぐらい、だいぶ前やわ」
 「瞳ちゃんが小さい頃に虹を見て、手を伸ばして虹を触りたいと言ってたね」
 「近くに感じたので、虹の所まで連れてって、とせがまれた事もあったわ」
 「虹の橋を渡ったらどこに行くの?と聞かれて返答に困らされた事もあったね」
 雨あがりの昼下がり、ハンドルを握りながら瞳の思い出話に花を咲かせた。
 「岡山の瀬戸内海の空に、見事な虹のアーチを見ました。(瞳が亡くなった)11年前にも同じ
空の虹を見上げて、瞳があの虹を渡ってるんやと、目に心に焼き付いてます」
 先日、瞳のホームページの掲示板に、岡山に住む瞳の友達が虹について書き込んでいた。
 瞳が亡くなって11年にもなるのに、いつまでも心にとどめてくれているその友達に感謝する
と共に、瞳と見たあの時の虹が脳裏に甦りうるっときた。


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