hitomi's poetry
想い出綴り−48 久しぶり…
cici
 自宅横の遊歩道の桜の木が(あわ)いピンク色から瑞々(みずみず)しいグリーン色に衣替(ころもが)え。
 その木の周りには桜からバトンを受けたツツジの花が(あざ)やかな赤紫色に染めて、道行く人々の目を楽しませている。
 学校帰りの子供たちがツツジの花びらの根本(ねもと)から甘い(みつ)を吸っている。ふと子供の頃の自分を彷彿(ほうふつ)とさせた。
 楽しそうにはしゃいでいる女の子たちの中の一人が、こちらを向いて優しく微笑(ほほえ)みかけている。
 「うん?どこかで見た様な…。あっ、(ひとみ)や」
 久しぶりに元気そうな(ひとみ)の顔を見て、私は嬉しさのあまり(まぶた)に涙をにじませた。
 いつの間にか場所が自宅(じたく)に移った。
 朝、起きると台所(だいどころ)で中学生らしき女の子が弁当を作っていた。友達も一緒に居て何やら話している。
 「私とこのお父さん、若なったやろ。最近、シャツの(すそ)を外に出してるねん」 
 どうやら私の事を話しているみたいだ。目を(こす)ってよく見ると(ひとみ)だ。そして友達は仲良しのミコちゃんだ。
 「なんで中学生(ちゅうがくせい)やねん?なんでこの時間にミコちゃんがココにいてるねん?」
 疑問(ぎもん)に感じると同時に目が覚めた。
 弁当はいつも妻が作っていたのに「(ひとみ)も自分で作る様になったんや、しっかりしてきたなあ」と感心。
 「天国(てんごく)で友達も出来たし、ちゃんとしてるで。お父さん、安心してや」とのメッセージかなと思った。 
 (ひとみ)の夢は、月日が経つにつれて徐々に見なくなっていたので、久しぶりに見ると(なつ)かしさで胸がジーンとくる。
 「久しぶりやなあ、(ひとみ)…」
 その余韻(よいん)をいつまでもベッドの中で()みしめた。


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